目次
初めに
今回のコラムでは、開業して1年ちょっと経つ私の事務所の現状などについてお話していこうと思います。税理士として開業を考えている方や開業して日が経っていない方の税理士事務所の経営にお役にたてればと思います。
事務所としてどのような方向性で行こうとおもったのかという経営戦略の部分から、現在の売上・利益などまでなるべく詳しくいこうと思います。
1年間で急成長したわけでもありませんし、成功しているとも言い難いので参考になるかはわかりませんが、1つの経営方法だと思ってもらえればいいのではないでしょうか?
事務所としての方向性
まず以前勤めていた事務所を辞めて独立しようと考えた時から考えていたのが事務所としての方向性です。どのような事務所にしていくのか、どのような顧問先を相手にしていきたいのかなどを半年間くらい考えていました。
参考としたのは、実際に働いてきた事務所のやり方や回りの税理士事務所の失敗談などです。
私自身は税理士2世でありません。そのため顧問先も何もないところからのスタートとなりました。(実際には2件顧問先を引き継がせてもらいました)
そのため大変な挑戦ではありましが、逆に考えると何もとらわれることがないため、自分の好きなようにできるということでもありました。
そこで、私がどのような事務所にしていきたいかを考えたときに、地元にはないような事務所にしようというところから考えることにしました。
一番初めの方向性は「地元にない税理士事務所」ということでした。
わたしの地元は三重県の伊賀市という田舎であることもあり、都会の大規模税理士事務所は余り進出してきていない印象もあり、「コンサルティング」を扱う税理士事務所が少なかったので、コンサルティングに特化した税理士事務所にしようと思いました。
このように思ったのは、一番初めに大阪の税理士法人で働いていたのですが、その事務所がコンサルティングを中心とした税理士事務所だったからです。これがこれからの税理士事務所の姿なんだろうなと思っていました。
地元の周りの経営者の方の話を聞いていると、「顧問税理士が何もしてくれない」とか「年に1回くらいしか会わない」ということを聞いたので、この悩みを解決できればいいのではないかと思い、大阪の税理士法人を参考にコンサルティングに力を入れた税理士事務所にしようと決めました。
コンサルティングといっても範囲が広すぎるので、どのようなコンサルティングをすることがいいのかという問題があります。私自身、「税理士は経営者の悩み事を一緒に解決していく存在であるべき」と思っていたので、「経営者の悩みを一緒に解決するコンサルティング」を数字の面からしていこうと幅広く考えました。
中小企業の経営者の多くは相談相手が顧問税理士というデータもあります。なので、相談がしやすい税理士になろうと思ったのです。数字の面からということで、資金繰りや銀行融資などから、利益が出ない原因の追究、設備投資の特例税制の手伝いなど、税理士として関わる税務分野と範囲が近いものを中心としてコンサルティングをしています。
中小零細企業の多くは高額なコンサルティングは必要ないように感じています。というのも大企業の考え方を中小企業に当てはめても当てはまらないからです。持っている資源が違いすぎます。中小零細企業には中小零細企業なりのコンサルティングが必要であり、それができるのは一番身近な税理士だと感じました。
これは、開業してから1年少し経っているいまでもほとんど変わりません。専門分野でなくても、経営者の方と密に考えていける存在というのが大切なのだと思います。
ある顧問先で人事制度を入れたいという話があり、大手のところに人事制度作ってもらったみたいですが、内容がややこしすぎて結局使わずに終わっていました。評価をするために、人事制度が欲しいとのことだったので、社長と一緒に作っている最中です。実際につくり始めると、必要としていたのは大手が作ってきた人事制度とは全く違うものになってきています。
このように中小零細企業には大企業に当てはまっているものは当てはまらないことが多々あります。このようなことを一緒に考えて解決していくというのが、私たちの事務所の方向性です。
現在も同じ方向性のままで進んでいます。
方向性のもう1つとして考えたのが「何の専門を目指すか」です。
税理士の仕事の特徴として、専門分野の範囲が広いことにあると思います。税理士試験で考えても13科目あるうち8科目は勉強しなくても税理士になることができますよね?大学院の論文免除であれば10科目は勉強しなくてもなれます。
つまり、できる分野とできない分野というのが出てくるということになるのです。
私自身、税理士業界に入って8年ほどたってから独立をしたのですが、8年間の間に相続税の申告を1度もしたことがありませんでした。なので、相続税の申告については無知なのです。つまり、やってはいけない分野ということだと思いました。
多くの税理士事務所で相続税の専門でなくても相続税を扱っているところも多くあります。それが悪いというわけではありません。私の事務所としては、相続税という分野をやらないと決め、相続税専門の税理士法人と業務提携を結ぶことにしました。実際に直近、わたしの祖母の相続があったのですが、自分では申告を行わず報酬を払ってお願いすることとしました。結果、私が想像していた税額よりも安く済んだので正解だったと思います。
相続税の他にも、所得税についても試験勉強をしたことがなかったので基本的に引き受けていません。
私の事務所の現状としては、法人を中心としています。
法人の中でもNPO法人や公益法人などの特殊な法人、農業・福祉業などの苦手分野を行わないことに決めました。
税理士事務所だからと全てに手を出すのは良くないと思っています。職員の人数が増えてきたあとに広げていくのはいいと思いますが、独立したてのころは恐らく1人で始める方が多いと思います。その時は専門を絞るのがいいでしょう。
そんなに絞ってしまうと顧問先がなくなるのでは?と心配されるかもしれません。
確かに、顧問先の対象が少なくなるので、顧問先数が増えるペースは遅いです笑。
相談に来られても断ることも多いので。そのようなデメリットもありますがメリットもあります。
専門を絞るメリットは、勉強する範囲を限定することができるため、知識を深めることができるということです。
顧問先の業種も似てくるため業種の知識も深めることができます。
相続税も所得税もと範囲を広げすぎると、対象となる顧問数も増えますが、それだけ知識を入れる範囲も増えてしまうということになります。試験勉強で勉強していたり、すでに実務経験で自信があるのならいいと思いますが、あまり広げすぎないのがいいでしょう。
もう一つ専門を絞るメリットは、会計ソフトの値段を安く抑えることができるということです。
会計ソフトはメーカによって異なると思いますが、多くのメーカーが会計・法人・個人・資産の3つか4つに分かれていることが多いと思います。私の事務所はTKCのソフトとICSのソフトを利用しているのですが、資産税分野をしないと決めているので、その部分はソフト代が安くなっています。
個人については、あまり積極的に対象としていないのですが、自分自身が個人事業主なので必須になってしまっています。
ソフトをどこのメーカーにするのか悩まれている方も多いと思います。特に複数の事務所を経験している方は事務所によって違うからです。そのため私の事務所はソフトを使い分けています。
わたしの事務所では、顧問先の方に入力してもらうのはfreee、決算書の作成はICS、申告業務はTKCと使いわけています。本来はどれかで一気通貫で行うのがいいのだと思いますが、私はそれぞれの特徴と強味を利用したいために3つ使っています。
freeeは顧問先の経理担当者の方が簿記の知識が無くても会計入力がしやすいという点とAIによる自動記帳などができるという点から会計入力に使用しています。
ICSは様々な会計ソフトから仕訳を取り込みやすいという点から決算書の作成に利用しています。
TKCは申告のシステムの利用のしやすさもそうなのですが、それ以外のサービスが充実しています。例えば、BASTや三共済など経営に必要な情報やサービスが充実しているという点から利用しています。
少し話がズレましたが、システムの料金も安くなるというメリットもあります。
税理士事務所をやるにあたっての方向性と専門性というのは大切になってくると思います。
ここまでで話が長くなってしまったので、実際の売上や顧問先になってもらった経緯などについては次回のコラムでお話していこうと思います。