目次
初めに
今国会では消費税減税についての結論がでることはありませんでしたが、消費税減税が進もうとしています。選挙当初の公約では食料品の消費税を0%にするということで進んでいましたが、どうやら1%で決まりそうな気がしてきています。
おそらくこのままいけば食料品の消費税について8%から1%に減税するという、消費税ができていこう初めての減税政策となるのではないでしょうか。
今回のコラムでは、この消費税減税でどのような影響が起こるのかについて税理士の目線から考えようと思います。税理士目線ですので、消費者というよりも事業者に焦点を当てて考えていきます。
そもそも消費税の納税とは
まず、考えるべきは消費税の納税についてです。消費税減税で騒がれていますが、そもそもの消費税の納税は事業者が行っていることになります。消費者はあくまで負担者という形で負担をしているだけで納税をしているわけではありません。
このことを念頭に考えると、消費税減税の話題のなかでよくでてくる話が、飲食店などで消費税が払えなくなるという話題です。しかし、普通に考えるとこれはおかしな話なのです。
消費税の仕組みとしては、消費者から消費税を預かり、支払った消費税を引いた金額を納付するという形をとっています。つまり、消費税は預り税の性質がありますから通常払えなくなるということはないということです。
数字を当てはめて考えてみましょう。例えば550円(消費税50円)の物を仕入して、1,100円(100円)で売ったとします。この場合の消費税を考えると、1,000円に係る消費税は100円で仕入れの500円に係る消費税は50円ですよね?この100円から50円を引いた金額を納税するということになります。
つまり、本来1,000円の物に消費税100円を乗せて売っているため、100円は実質売上ではなく消費者(買ってくれた人)から預かっているにすぎないということです。逆に本来500円の物を50円の消費税が乗った金額で買っているため、この50円は販売者(売ってくれた人)に貸しているに過ぎないということです。
この預かっている100円と貸している50円の差額を納税しているだけですから、通常は消費税を払えないということはあり得ないということです。
さきほどの例で行くと、本来は1,000円から500円を引いた500円が利益となります。一方消費税を加味すると、1100円から550円を引くと550円になります。そのうちの50円を納税するので、結果は利益500円となります。
このように消費税が何%になったとしても、影響しないはずなのです。
中小企業の実態としては
単純に考えるとこのように消費税自体は何%になったとしても企業の納税というところでは変わりません。変わるのは消費者の負担だけです。この消費者というのも最終負担者の負担だけが変わるということです。そのため、消費税の減税となると、消費者の負担が単純に減るだけで、それ以外は問題にならないはずなのです。
では、なぜ企業の消費税の納税などが問題となるのでしょうか。
それは多くの中小企業は消費税分も売上と考えて、他のところに資金を回してしまっているという実態があるからです。
どうゆうことか説明します。
先ほどの例を使いましょう。先ほどの例では、消費税を加味してもしなくても、利益は500円で変わらないというお話をしました。
しかし、実際はどうなっているか。
このような中小企業が多いのではないでしょうか。1,100円の売上と550円仕入がある場合に、使えるお金はいくらあると思いますか?
先ほどの例を見ているため、500円と答えることができると思いますが、実際は550円と思ってしまっているケースがほとんどだと思います。
中小企業の多くは借入を行っていますから毎月500円の返済があった場合どうなるでしょうか。
550円の利益があるから、最終的には50円残るよねと考えてしまいがちですが、この50円は消費税の納税に充てられてしまいますので、最終的に残るのは0円となってしまいます。
これがもし、借入550円だとどうでしょう。550円あるため借入は返せていけますよね。しかし、消費税の50円が返せない状況になってしまうのです。
このような状態が多くの中小企業で発生してしまっているのが現状だと思います。
このような考えになってしまう原因は、会計処理にあると思います。消費税の免税事業者つまり、消費税を納める義務がない方については関係ないのですが、消費税を納める必要がある事業者の方の会計処理を税込経理でしてしまっている場合です。
消費税の会計処理には、税込経理と税抜経理という2つの考え方があります。どう違うかというと、消費税を含めて利益を計算しているか、消費税を抜いて利益を計算しているかということになります。最終的な結果は同じになるのですが、見え方が変わってしまうのです。
税込経理でしてしまっていると、消費税も売上の一部に含まれて表示されますので、実際よりも売上や利益が多く見えてしまっているのです。それに対して、税抜経理では消費税を含めずに表示されるので、実際の状態を反映できていると言えるでしょう。この税抜経理の状態で利益がでている場合には、おそらく問題なく納税もできていると思いますが、税込経理の状態で利益がでている場合には注意が必要です。消費税を除いた場合に赤字になることも少なくありません。
税込経理の方が処理をしやすいため、小規模の事業者であれば税込経理で行っているのがほとんどではないでしょうか。顧問税理士を付けていたとしても、税込経理で行っているところが多いと思います。その方が処理としては楽ですからね。
このような会計処理の関係もあり、多くの中小企業・個人事業主で消費税について見誤りをしてしまっているケースがほとんどだと思います。
では、このような実態がある上で、消費税の減税が起こればどのような影響がでるでしょうか。
消費税減税によってどのような影響があるのか
では消費税減税された場合にどのような影響が起こるでしょうか。これはあくまで私自身の考えなので、どのように実際なるかはわかりません。しかし、おそらくこのような現象が起きるのではないかということです。
先ほどの中小企業の実態でも説明したように、現状多くの中小企業が消費税も含んで経営を行っていると説明しました。この場合に消費税が減税されたとして、本当に減税効果はあると思うでしょうか。その代表格が飲食業だと思います。さまざまな業種の中で飲食業が最も、今回の消費税減税の中心となるのは間違いがないでしょう。なぜなら、飲食業が8%で仕入をして10%で売るという代表的な事業だからです。
通常の事業は10%で仕入をして10%で売るので今回の影響はないでしょう。そして、卸売業やお弁当などを製造している事業については、8%で仕入て8%で売っている事業のため、減税されたとしても、1%で仕入をして1%で売るということになるので、あまり大きな影響はないように思われます。
ただ、この食料品の卸売り業の間でどうなるかによって、大きく消費税減税の効果が変わってくると考えます。
中小企業の多くが消費税を含んだ金額で考えていると言いました。ということは、現状1,000円のものを1,080円で売っている場合には、1,080円をベースに考えているところが多いと思います。
そうなると消費税が1%に減税したからといって、値段をさげると思いますか?
つまり、消費税が1%になったからといって、1,080円で売っているものを1,010円で売ると思いますか?ということです。おそらくそれができるところは普段からしっかりとできているところでしょう。しかし、経営が厳しい状態のところであれば、1,080円のままにするのではないでしょうか?
そのような会社が悪いといっているのではなく、私だったらそうするからです。なぜなら1,080円のままであれば、飲食店的にも仕入値は変わっていないことになりますから、そのまま買ってもらえる可能性が高いでしょう。
しかし、実際はその中に含まれる消費税の額が80円から11円に減っているので、飲食店としては69円分消費税の納税が多くなるという風に感じるということです。
通常は、このようになったとしても消費税の納税は預かったものから支払ったものを引くだけですので、払えなくなるということはありません。
しかし、多くの中小企業の実態を踏まえると増税したように感じることになると思います。
これに対して食料品の卸売り側では、実質値上げをすることができるということです。今までは1,080円で80円消費税で納めていたものが、減税後同じ1,080円でも11円納めるだけで済むようになりますから、69円得するということになります。
このように、減税をした場合に全ての企業が今の税抜金額から変えないというのであれば、減税効果は全業種に及ぶと思いますが、1つでも今説明したようなスキームをとると減税効果が全くなく、飲食店などからすると増税したように感じてしまうということになります。もし、こうなると飲食店としてとる行動は値上げをするということになりますので、ますます客足が遠のく可能性や消費者の負担が増えるという悪循環になる可能性もあります。
実質値上げをするからと言って卸売業が悪いとは思いませんし、全ての卸売り業の方たちがそのような行動をとるとも思っていません。しかし、経営判断の一つとしてはこのような判断をするのも手段だと思います。
つまり、何がいいたいかというと政府が思っているような減税効果を消費者は実感しないということです。2年間の時限措置ですので、2年後には分かるでしょう。
私自身、減税には賛成です。古事記にも描かれているように、国民が苦しいときには減税をすべきだと思います。
しかし、その減税は全体にかかるものでなければ意味がないと思います。
そのため、減税するのなら食料品に限定するのではなく、全体を下げるべきだと思っています。10%を8%とか7%とかに下げる方が、全体的に減税されるため減税効果というのは感じられるのではないでしょうか。
消費税ができていこう初めての減税政策となりますので、どうなるかはわかりません。来年の4月ころには減税する見通しですので、それ以降にどうなるのかわかるのではないでしょうか。