目次
初めに
総選挙の情勢調査をみていると自民党がかなりの優勢で進んでおり、単独過半数を上回る勢いがありそうです。維新の会との連立を合わせると安定的な議席に達成する勢いがあるため、政策がかなり進むことになるのではないでしょうか。
今回のコラムでは、今回の選挙で多くの政党が掲げている消費税の廃止についてどのような影響があるのかを考えていきましょう。一番可能性が高そうな自民党案である軽減税率の2年間の廃止を基に考えようと思います。
消費税の軽減税率廃止による影響
消費税の軽減税率が廃止されることによってどのような影響があるのでしょうあ。個人消費者と事業者に分けて考えてみたいと思います。というのも個人消費者と事業者では消費税に対する感覚が違うからです。
⑴個人消費者
まずは個人消費者の立場です。これは間違いなくお得に感じるでしょう。なぜなら食糧品の消費税がなくなるのですから。ただ、どのような消費者が一番得をするかというとお金持ちです。毎月の食費(食糧の購入)ってどんなもんですか?
家族の人数などにもよるかもしれませんが、だいたい7万円~10万円くらいなのではないでしょうか?1人くらしや2人暮らしの方であれば5万円程度かもしれません。
月7万円と考えると消費税は7万円の8%で5,600円なので年間約6万円~7万円くらい浮くことになります。これに対して、お金持ちで良い食材を買っているひとたちはもっと恩恵を受けることができるでしょう。
消費税は、金額に限らず一定の率が課される税金なので、高いものを買えば買うほどお得に感じてしまうという性質があります。ただ、どの世帯にとっても減税の恩恵を得られるものでもあります。
話しがそれますが、年収の壁が103万円から178万円まであがりましたよね?この所得税というものは累進税率という仕組みをとっており、所得が多い人ほど税金も高くなります。そのため、178万円に年収の壁が上がりましたが、もとから178万円なかった人にとっては恩恵を得られない税制になっています。
つまり、年収の壁は所得が多かった人にのみ恩恵が得られるという制度だったのです。なので、年収の多寡によって感じる恩恵が全くかわるのです。政府の資産では、5万円~6万円の減税と言っていますが、これは年収が500万円~600万円くらいの人にとってということです。200万円や300万円の方にすると数千円くらいの減税にしかなりません。
このことを考えると、消費税の減税はお金持ちにとっても減税になりますが、低所得者にとっても同じだけ恩恵を受けることができるということですね。
⑵事業者
次は事業者にとっての影響です。これは、業種によって大きくことなります。まず、製造業や建設業のようにそもそも8%の軽減税率の取引がないという業種にとっては、ほとんど影響ないといっても問題ないでしょう。
大きな影響がある業種が、卸売業と小売業、農業、飲食業になります。
それぞれどのような影響になるのかを考えてみましょう。
①卸売業・小売業
まずは卸売業や小売業です。これらの業種は10%のものと8%のものの比率によって変わります。例えば、食品を扱っていない卸売業にとっては、軽減税率の廃止は関係ないので何も変わりません。
しかし、8%の食品を多く扱っている小売業や卸売業の場合には大きな影響がでる可能性があります。例えば、イオンのようなスーパーなどです。10%も8%もあるけれど、8%での売上が多く占める様な業種です。
このような業種の場合は、かなり得をすると思います。なぜなら、仕入は10%の仕入があるのに対して、8%の売上が多いということは消費税の還付になる可能性が高いからです。それぞれの割合によりますので、必ず得をすることになるとは言い切れませんが、得をする可能性が高いと思います。得をするというより還付になる可能性が高いといった方が良いかもしれません。
②農業
農業関係はかなり大きな影響があると思われます。消費税を支払うということは無くなるでしょう。ほとんどが還付されることになります。なぜなら、農業などの業種は肥料や機械は10%で仕入ているのに対して、売上のほとんどが8%の物だからです。ものによっては10%になってしまう部分もあると思いますが、ほとんどが8%だと思います。そのため、消費税の軽減税率が廃止されることによって、売上の消費税は0になり、仕入部分の消費税が丸々還付されるという状態になる可能性が高いでしょう。
現在、お米の価格が上がっているなかで、売上にかかる消費税がなくなり、仕入にかかる消費税がほとんど還付されるということになりますので、農業の経営に大きな影響があると思います。利益が今まで以上に大きくなるということです。つまり、この消費税の時限措置の期間の利益が大きくなり、時限措置が終わったあとの納税が多くなってしまうというデメリットはありますが、時限措置の期間はほとんどが還付されることになるので、お金を貯め込むチャンスであるでしょう。
経理処理を税込経理などで行っていると、未収還付分が益金として利益に乗ってくるので法人税や所得税の支払が多くなることが考えられます。税抜経理にすることで消費税部分を引き抜いて経理する方が良いかもしれませんね。税抜経理であれば消費税の還付部分が益金に乗ってくることはありませんので、純粋な利益に対しての法人税・所得税にすることができると思われます。
お米価格の高騰や消費税の時限措置がどの程度続くのかは予測ができませんので、必ずそうなるという保証はできませんが、顧問税理士の方などと対策をするのがいいのではないでしょうか。
③飲食業
飲食業については農業などと逆の影響になります。多くが増税される感覚になるのではないでしょうか。そもそも消費税自体は預り金の性格なので、商品価格に転嫁されていますから払えないということは基本的には起こらないものです。しかし、多くの中小企業ではその転嫁されている消費税部分まで含めて考えているので、増税になる感覚が多くなるかもしれません。
飲食業などで注意が必要なのは、仕入先(8%)の値段が消費税分どうなるかということです。
何が言いたいかというと、消費税が廃止されるからと言って仕入値が消費税分安くなる保証がないということです。先ほども述べたように中小企業の多くは、消費税部分も含めて考えていることが多いのです。つまり、消費税が廃止になって売上に消費税分を転嫁できないとなると、経営が回らないと考えられる場合には、消費税部分を値上げという形にされる可能性が高いということです。
例をあげると、108円(消費税8円 )の仕入が、消費税廃止によって100円(消費税0円)になれば、飲食業としてもダメージは少なくないですが、消費税分も値上げという形で108円(消費税0円)となれば、飲食業は増税という形になります。
なぜなら、今まで8円引くことができていたものが、引けなくなる上、8%値上げされるのと同じだからです。消費税の支払は控除できるものが少なくなるため増え、さらに利益まで圧迫されるとなると飲食業としてはかなり厳しい経営にもっていかれることになります。それをカバーするためには、飲食業界も値上げをする必要があるため、結局値上げのループに入ってしまい物価が上がり続けるということも考えられるのです。
どのようになるのかは廃止されないとわかりませんが、このような原理になることも考えられるのです。
では、飲食業はどうすればいいのか。それは弁当を売るということです。テイクアウトを強化するということになるでしょう。消費者からしても店内飲食は10%でテイクアウトは0%になるので、テイクアウトを選ぶことが多くなると思います。現在多くのチェーン店では金額を合わせて、消費税の内訳を変える工夫をされています。
例えば、100円の物を店内飲食は100円(消費税9円)で、テイクアウトは100円(消費税7円)とするような形です。この原理でいくと、テイクアウトは100円(消費税0円)となりますので、テイクアウトの方が税金を払っているという感覚が少なくなるため、消費者の傾向としてもテイクアウトが多くなるのではないかと思います。
そのため、飲食店もテイクアウトを強化すればいいということです。さらに飲食店側からすれば、同じ金額にしておけば、テイクアウトを選んでもらう方が税金を払わなくて済むので得をするのです。なので消費税の廃止が決まれば、店内飲食とテイクアウトを作り同じ商品を同じ金額で提供し、テイクアウトを選んでもらうことで消費税の支払を少なくするという方法をとることができるのです。
机上論であるだけで、実際にはそのようにいかないと思いますが、飲食業が軽減税率の廃止で消費税の支払を少なくするための方法としてはこのような方法が考えられるのではないでしょうか。
ただ、消費税の軽減税率の廃止については政策の公約に入っているだけで、選挙が終わり与党が過半数以上を獲得できて初めて審議に入ると思われますので、すぐに決まるかというとそうではないと思います。国民会議によって意見などを集めてから結論に至ると思いますので、遅くても今年一杯はかかることになるのではないでしょうか。
まとめ
ここまで今回の選挙戦のテーマの1つになっている消費税の軽減税率の廃止による影響を見てきました。大きな影響がでると考えられる業種もありますので、どのような方向性で進むのかは重要になるのではないでしょうか。消費税の軽減税率の他にも積極財政ということで投資促進策が多く打ちだされるのは間違いないでしょう(自民党・維新の会の与党が過半数以上を獲得すればのはなしですが)。
さらに、社会保険料の引き下げや給付付き税額控除などの政策についても様々な党の公約に入ってきていましたので選挙後の動きにも注目する必要があると思います。
今回の総選挙の大義は、高市政権を選ぶのか野田・斎藤政権を選ぶのかということだと思います。前回の石破政権の時には、自民党と公明党の連立政権であったものが、今回高市政権になったことで、公明党との連立が解消し、維新の会との新たな連立を組むということになりました。前回以前とは体制が全く新しいものになっての初めての総選挙となります。
残り数日を切りましたがどのような結果になるのか8日が楽しみです。結果によっては大きく変わるのではないかと思います。税理士としても税制が大きく動きそうな選挙となっていますので、どのような結果になるのか楽しみです。