目次
前回の続き…
⑷青色申告特別控除の拡充と縮小
これは個人事業主の方に影響のある改正になります。青色申告特別控除について現行の55万円控除については、e-taxで貸借対照表及び損益計算書を提出することを要件に65万円に引き上げられます。また、現行の65万円控除については、55万円の要件にプラス仕訳帳や総勘定元帳について電子計算機を使用して作成・保存することで65万円から75万円へと引き上げられることになります。会計ソフトや税理士を使用している個人事業主の方については75万円控除されることになりそうです。
ここの部分については給与所得者の給与所得控除額が上がるのに個人事業主の控除が増えないのは不公平感があることから、青色申告特別控除という形で10万円上乗せするという形になるのではないでしょうか。
これに対して現行の10万円控除の対象者については厳しくなります。10万円控除の対象者については簡易的な簿記の法則により記録していれば対象となりますが、不動産所得・事業所得を生ずべき事業を行っている者で前々年の収入金額が1,000万円をこえる者については10万円控除の適用を受けることができなくなります。
判定の仕方が消費税の課税事業者の判定みたいですが、不動産所得・事業所得で収入金額が1,000万円をこえる方については、10万円控除が使えなくなるとのことなので、この部分では厳しくなると考えられます。
⑸暗号資産の分離課税化
金融商品取引法の改正を前提にですが、仮想通貨等の暗号資産について現行の総合課税から株式などと同じ分離課税になる見込みですので、暗号資産を持っているかたについては有利な税制となりそうです。
⑹食事支給にかかる非課税額の拡充
使用者からの食事の支給による経済的利益の供与について所得税の非課税額が拡充されます。現行では月額3,500円となっていたものが、月額7,500円まで拡充され、夜勤勤務の夜食についても1回の支給額が300円から650円へと拡充されます。物価高を考慮しての拡充となりそうです。
⑺教育資金の一括贈与の非課税措置の廃止
教育資金の一括贈与の非課税措置については延長せずに廃止となります。そもそも使いにくい制度であまり使用されていないと思いますので、廃止されてもそこまで大きなダメージにはならないでしょう。
⑻中小企業者等の少額減価償却資産の特例の拡充
中小企業の方にはおなじみの30万円未満の少額減価償却資産の特例について30万円未満から40万円未満へと拡充されます。税抜経理の場合には439,999円(税込)のものまで一括で損金算入することが可能となります。昨今の物価高により30万円未満のものが少なくなってきていることを考えると物価上昇に合わせた形なのかなと思われます。1年間の上限額は300万円から400万円になるのではないでしょうか。
⑼特定生産性向上設備等投資促進税制の創設
新たに設備投資にかかる税制が創設されました。青色申告書を提出する法人で特定生産性向上設備等に該当するものを取得し、事業のように供した場合において事業の用に供した事業年度に即時償却もしくは取得価額の7%を税額控除することができ、税額控除しきれない場合には3年繰越ができるというものです。
イメージとしては、現行にもある「中小企業経営強化税制」の全体版のような感じでしょうか。大企業などにも適用される形になるのだと思います。高市内閣の設備投資への後押しという位置づけの税制になるのではないでしょうか。ただ、特定生産性向上設備について要件などはかかれているのですが、これがどのようなものになるのかがイメージができないため、様子を見ながらということになるのではないでしょうか。中小零細向けというよりは中堅大企業向けとなりそうな税制に思われます。
⑽賃上げ促進税制の縮小
こちらについては全法人向けが令和8年3月31日で廃止となります。残るのは中堅向けと中小企業むけとなり、中堅向けについても令和9年3月31日で廃止ということになっています。中小企業向けについては当分の間続きそうですが、教育訓練の増加による上乗せ要件については廃止となりそうなので、控除税額が少なくなる見込みとなりそうです。従来の給料が上がることによる上乗せ要件については残っていますので、中小企業の方にとっては大きな負担増となるとは考えられないでしょう。
高市総理が総裁選の時に提案していた、赤字企業が賃上げをした場合の措置については今回の税制改正大綱では記されていなかったように思います。今後のこの部分についてもどのようになっていくのか注目ですね。
⑾適格請求書発行事業者となる小規模個人事業者にかかる税額控除に関する経過措置の見直し
インボイス関係について今回の改正で動きがあることになりそうです。残念ながらインボイス制度がなくなるということは税制改正大綱の内容からないと思われます。インボイス制度に関する見直しは2つあり、1つ目が所謂2割特例の見直しです。現在、免税事業者であるはずの者がインボイスの登録により課税事業者となった場合には、消費税の2割の納税で済む2割特例とよばれる制度があります。この2割特例が3割特例となるとされています。2割が3割になる以外の要件などについては現行とは変わりません。令和8年10月1日以後に終了する課税期間から適用となるみたいです。令和9年及び令和10年に含まれる課税期間というような時限措置となっています。
簡易課税と比較すると、卸売業・小売業・製造業・建築業・農業などの第3種事業までの事業については、簡易課税とほぼ変わらないということになりそうです。第4種から第6種事業の事業を行う方については、3割特例の方が有利になりますので、簡易課税の選択をするのか原則のままにするのかなどを考えていく必要がありそうです。
⑿適格請求書発行事業以外の者からの仕入れにかかる税額控除に関する経過措置
インボイス関連のもう1つの見直しが、仕入税額控除の経過措置です。こちらについては、期間が現行の令和11年9月30日までだったものが、令和13年9月30日まで2年間伸びることになります。さらに、現行では80%→50%→0%という段階で減っていくはずであった控除割合が、令和8年10月から令和10年9月30日まで70%、令和10年10月1日から令和12年9月30日まで50%、令和12年10月1日から令和13年9月30日まで30%と段階が増えることになります。この部分については緩和される形になるので、よかったのではないでしょうか。本来であれば、この令和8年10月1日からは50%に減る予定だったものが70%と10%程度の減少で収まることとなるので、急な負担増につながるわけではなさそうなので一安心かと思います。
⑾の3割特例と70%控除を合わせていることから、今後も50%の時には5割特例、30%の時には7割特例となっていくのではないでしょうか。
少なくともいずれは0%に向かわせるという形になりそうですね。今回のインボイスの見直しの部分では少額(1万円以下)のインボイスの要件については触れられていませんので、その部分はとりあえず変更なしで行きそうです。
⒀仕入税額控除の経過措置の上限
インボイス関連で⑿の仕入税額控除の経過措置の上限について、現行の10億円から1億円へと大幅に減額されることになります。これは一の適格請求書発行事業者以外の者からの仕入れで同じ事業年度に合計が1億円までということになります。租税回避などの防止を目的としての改正になるでしょう。なので、通常の商取引については大きな影響にはならなそうです。
まとめ
ここまでが今回の令和8年度税制改正大綱の内容になります。ここで紹介したもの以外にもまだまだ改正の内容についてはあるのですが、中小企業に影響が大きそうなものをピックアップした形となります。石破内閣の時と比べると増税路線とはならない形になっていくのではないでしょうか。むしろ、大企業の賃上げ促進などの必要がない部分への税制優遇をやめ、設備投資などの様々な業種に対して影響がありそうな部分の税制優遇を創設するなど、国内投資を加速させていきたいという考えが見てとれるように思います。
給付付き税額控除など議論になっていた部分で税制改正大綱に上がってきていないものなども、まだまだありますので、今後もどのような政権運営となっていくのか注目をする必要がありそうです。さらに令和9年以降にはガソリンの暫定税率の廃止による減税部分の財源確保等が決まることになるので、どのような部分で財源を確保していくのか、どの部分に税を課していくのか注目となるのではないでしょうか。
現段階では大綱ですので今後通常国会等を経て成立するまでどのようになるかはわかりません。また、来年以降に決まってきた部分が分かればより詳しい内容のコラムを作成していこうと思っています。
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税制改正大綱→令和8年度与党税制改正大綱