目次
初めに
12月19日に高市内閣が発足して以降初めての税制改正大綱が発表されました。税制改正大綱は毎年与党を中心に協議される翌年度以降の税制についてを記されたものであり、この税制改正大綱をもとに翌年度以降の税制が決まっていきます。
今回の税制改正大綱には自民党と日本維新の会の新しい連立政権で記されたものとなります。では税制改正大綱の中身について中小企業に影響があるものをピックアップしてみていこうと思います。
私の主観的な意見も混じると思いますが、来年以降どのように進んでいくのかを確認しましょう。
令和8年度税制改正大綱
⑴概要
まず令和8年度の税制改正大綱がどのようなものなのかについて考えていこうと思います。税制改正大綱の全体を見た感じの私の意見は「成長促進と無駄の廃止」このようなイメージを受けました。
今回の税制改正大綱の大きなポイントは、まず年収の壁の引上げではないでしょうか。昨年に引き続き年収の壁が160万円から178万円までさらに引き上げられることになりました。加えて、物価高に応じで今後も柔軟に変更していくということまで記載されています。さらに、年収の壁だけでなく、年収665万円相当までは基礎控除の特例も上げることになっていますので、昨年の年収の壁の引上げの時よりも効果は大きくなるのではないでしょうか。そのほかには、通勤手当の見直しもされています。廃止の方向に向いていた通勤手当がここにきて拡充されるということになりそうです。さらに今までには無かった駐車場代に対しても5,000円を限度に非課税とされる見通しです。そして個人に関係するところでいくと住宅ローン控除の延長と拡充です。今年いっぱいで終わるのかと思われていた住宅ローン控除が5年程度延長する見込みです。さらに、中古住宅について大きく拡充されるとの記載もされています。物価高による資材高騰の影響から新築から中古リフォームという形に大きく変わるのではないでしょうか。
法人税関係でいくと、賃上げ促進税制については、縮小されることになるでしょう。大企業については廃止がきまり、中小企業は引き続き賃上げ促進税制の適用はありますが、教育訓練費の増加による上乗せ要件については廃止されそうです。また中小企業の少額特例とされていた30万円未満の資産の一括損金の規定については、30万円から40万円へと拡充される見込みです。
インボイス制度についても改正が入ることになりそうです。税制改正大綱を呼んでいる限り、インボイス制度の廃止という方向には進まなさそうですが、経過措置の期間と率についての見直しがされることになります。さらに、経過措置の適用を受けることができる上限額についても見直しがされることになりそうです。
この他にも自動車にかかる税金関係についてガソリンの暫定税率の廃止などの他にも環境性能割の廃止など総合的に見直しが図られることになりそうです。
概要はこれくらいにして、この中から何個かをピックアップして詳しく見ていこうと思います。
⑵年収の壁の引上げ
まず一番の話題がこの年収の壁の引上げではないでしょうか。160万円から178万円と引きあがることになります。ただ、大綱の中身をみていくと178万円になるのは現在のところ特例として2年間とされているようです。
どの部分が引き上げられるのか細かく見ていくと、基礎控除が現行より2350万円以下の個人について、58万円から4万円を引き上げ、62万円になることになります。それに合わせて給与所得控除が65万円から69万円に引きあがることになります。なので、所得税法上は現行の123万円から131万に上げることになります。この131万円が配偶者控除や扶養控除の壁となるのではないでしょうか。
この131万円に現行のように特例という形で178万円までもっていくというようになると考えられます。さらに、基礎控除の特例について、給与収入665万円相当の個人まで大幅に引き上げられることとなっています。特例ですので2年間だけなのかその後も続くのかはわかりませんが、給与収入665万円相当の個人の方については、大きな控除額となりそうです。
今回の年収の壁の引上げについては中間所得者層の方が一番得するのではないでしょうか。おそらく低所得者層の方については、もともとの税金も少ないためあまり恩恵としては感じられないと思います。数千円程度の減税となりそうです。それに対して655万円相当の中所得者層の方にとっては数万円程度の減税となるため、年間を通してみると大きな減税に感じるのではないでしょうか。また、配偶者控除についても引き上げることが想定されますので、共働きで配偶者控除を使用可能な世帯については大きな減税となりそうです。
低所得者の方が減税等の恩恵を受けるためには、現在国会でも議論されている給付付き税額控除の方ではないでしょうか。今回の税制改正大綱には間に合いませんでしたが、給付付き税額控除であれば控除しきれない部分は給付という形で支給されますので、低所得者の方にとっても恩恵を受けることができると思われます。
さらに、年収の壁の引上げとは別に、通勤手当についても大幅に拡充されることになっています。11月ごろに引上げられましたが、さらに拡充されます。現行では55km以上38,700円で上限が終わっていたものが、95km以上66,400円まで段階的に非課税限度額が設けられることになりました。それに加えて、駐車場料金についても1月5,000円までは非課税とすることになります。
マイカー通勤者にとっては、非常に大きな改正になるのではないでしょうか。ただ、この通勤手当については所得税法上での非課税になるだけで社会保険料の算定には含まれてしまうことが難点だと思います。
他のコラムでも何回が言及していますが、所得税法上の壁は引きあがり、非課税枠も拡充されていますが、社会保険料側は全く変わっておらず、むしろ壁がなくなり全員が対象となる方向へ進んでいますので、そこを間違わない様にしていただきたいと思います。
扶養の壁を考えるうえで、所得税法上はかなり拡充されましたので、普通に働いても扶養内に収まるということが多くなりそうですが、社会保険料側では壁がなくなるため社会保険料がかかってくるということになります。社会保険料は企業の規模によってことなりますが、130万円の壁と106万円の壁のように所得税の178万円の壁よりも低い壁となっています。
⑶防衛特別所得税
これも話題になっている気がするので、解説しておきます。防衛費の増額のための財源として新たに防衛特別所得税を課すとされていますが、内容としては東日本大震災以降に所得税に付加されていた復興特別所得税の部分を移すということなので、特に増税になるわけではありません。増税というよりも付け替えという風な言い方の方が合っているかもしれませんね。
現在、復興特別所得税として2.1%の税率を所得税額にかけています。この2.1%のうちの1%を防衛特別所得税として、のこりの1.1%を復興特別所得税とするということですので、現行よりも増税されるわけではありません。ただ、期間が令和19年までだった復興特別所得税が令和29年までと10年間伸びたため、全期間を通すと増税ということにはなりますが、東日本大震災以降からしか知らない世代にとっては特に変化はないと思いますので、あまり負担感は感じないと思います。増税というよりは付け替えというイメージですかね。
次回コラムへ続く…