役員報酬はどのくらいの金額がいいの?|伊賀市の税理士と考える|税務コラム|役員報酬の内容と影響、どのように決めるのかを考える|その2

2025.11.24

初めに

前回のコラムでは、役員報酬の種類と役員の意義などについて簡単にみてきました。今回のコラムでは役員報酬の金額についてどのように決めていけばいいのかについて考えていきましょう。

みなさんも役員報酬・役員賞与の金額をいくらくらいにすればいいのかということは悩まれるのではないでしょうか。今回のコラムで役員報酬の額をどのように決めればいいのかについて考えます。この答えについては様々ありますので、一意見程度に思ってください。このコラムに書かれている通りに従う必要はありません。

このコラムの内容なども参考にして顧問税理士の方と決めてもらうのがいいと思います。

役員報酬の金額の決め方

それでは役員報酬の金額の決め方について考えていきましょう。

役員報酬については、従業員給与とは性質が違うものと思ってもらうことが大切だと思います。従業員への給与は労働の対価として支給されるものだと思いますが、それに対して役員報酬は、責任に対して支給されるものだと思います。

中小企業の多くは代表取締役である役員の方が、銀行の融資の連帯保証人になっているとか、企業にお金がないときには個人マネーを入れるなどしていると思います。このように役員の方は会社をつぶさないため、従業員を守るために自分自身の身を削っていることがほとんどだと思います。その責任に対して支給されるのが役員報酬と思ってもらうのがいいでしょう。

①役員報酬はどれくらいがいいのか

では、責任に対して支払われる役員報酬については、どの程度の金額がいいのでしょうか。会社の財務状態や利益の多さにもよりますが、従業員で一番もらっている人の3倍はもらっていいと思います。例えば、50万円の給料をもらっている従業員がいるのであれば、150万円はもらってもいいでしょうということです。社会保険や所得税などひかれると手取りとしては少なくなってしまいますが、多くもらっておいて貯蓄しておき会社のお金がまずいときに入れるなどする必要があるため、もらえるときにはもらっておくのがいいと思います。

ただ、利益が出ているという前提です。利益が出ていなければ真っ先に削るのは役員報酬だと思います。従業員の給与を削減したり、リストラをしてしまうと売上が落ち込み利益が落ち込むという結果になるため、利益が出ていないときに削減するのは役員報酬ということになります。このような観点からも責任に対して支給される報酬であると考えることができるのではないでしょうか。

結論として、利益がしっかり出せているのであれば、従業員給料の3倍程度はもらっても構わないでしょう。従業員の目が気になるという方は、従業員と役員では立場が違うと思ってください。それでも気になるのであれば、従業員の給料も上げてあげましょう。役員報酬だけが上がると従業員もいい気にはならないかもしれませんが、従業員の給料も上げてあげるなど、会社の成果・利益に貢献してくれているお返しに還元してあげることで、従業員・役員それぞれがWinwinになれると思います。

役員賞与の金額についても同じように考えてもらうと良いのではないでしょうか。役員賞与は、従業員でいう決算賞与と同じような性質だと思います。つまり、目標を達成したときに初めて支給されるべきものなのではないでしょうか。会社の目標とは、従業員を守っていくため、会社を成長させるために最低限必要な利益だと思います。その利益目標を達成できたのですから、役員賞与という形で達成報酬的な意味合いでもらっても問題はないでしょう。そのため、役員賞与を支払うときは従業員に対しても賞与を支給することが大切だと思います。役員にだけ賞与が出ているとなると従業員にとってはいい気になれませんよね。お互いにとってWinwinの考え方で支給するということが大切なように思います。

②役員報酬の金額はどのように決めればいいのか

では、役員報酬の金額はどのように決めるのが良いのでしょうか。これは、役員報酬と役員賞与で考え方が変わると思います。

まず役員報酬については、毎月のものになりますので利益が毎月どれくらいでるのか、どれくらいの利益を目標しているのかで決める必要がありますし、役員の生活費などもどれくらい必要なのかも加味して考える必要があります。これに対して、役員賞与は目標を達成すれば払えばいいと思いますので、年間の目標を決めてその目標額を上回ったときにどれくらい支給するのかで決めることが大切だと思います。

まず毎月の定期同額給与の役員報酬については、粗利益がどの程度発生する見込みなのか、従業員の人件費や経費を引いた後に利益がどれだけ残るのかということが大切ですから、利益をベースに逆算していくことが大事だと思います。つまり、どういうことかというと、年間の経常利益をいくら出したいのかを目標を決めます。そして、その経常利益に経費(固定費)と従業員の給料を足し戻した金額が必要な粗利益(損益計算書の売上総利益)になります。この粗利益から粗利益率を割り戻したものが利益を達成するために必要な売上になりますから、目標を達成するために役員報酬をいくらまで払ってもいいかを決めるという順序になるかと思います。

例えば、経常利益の目標を100万円とした場合に、固定費と従業員の人件費が400万円あるとしましょう。そうした場合に、役員報酬を除いて必要な粗利益は500万円ということが分かります。粗利益率が50%で考えると、500万円を50%で割り戻すと1,000万円が役員報酬を除いた場合に必要な売上ということになります。この売上を上回ると初めて役員報酬が払えるということになります。

この例の場合に、役員報酬として500万円ほしいと考えましょう。すると、必要な粗利益は500万円+500万円で1,000万円となります。これを粗利益率で割り戻すと2,000万円となり、この2,000万円が役員報酬を500万円はらうために最低限必要な売上、この2,000万円をすでに超えている、もしくは超える可能性があるのであれば役員報酬を500万円までだせるということになります。

1年先のことなど分からないと思われるかもしれませんが、経営で大切なのは計画を立てることです。1年先の計画を立てることで目標とすべき粗利益の額や売上の額・利益の額が初めてわかるのです。計画なく行き当たりばったりだと、決算でふたを開けてみたら利益が多くて税金を多く払わないといけなくなったとか、逆に全く利益が出ていなくて資金繰りもまずいことになっているというようなことになるのです。

売上の何%のように決めるのもいいと思いますが、売上よりも利益をメインに決める方がいいと思います。というのも利益が企業を成長させていく源泉となりますし、建設業であれば経審などでも重要視されているからです。売上の何%としてしまって、役員報酬はもらえるけれど、結局利益が出ていないとなると会社の成長にもなりません。

中小企業のほとんどは株主が経営者の方もしくは、経営者の親族のみだと思いますがので利益を出す必要はない、税金を払いたくないと思われる方もいるかもしれませんが、持続していくためには利益を出すことが一番大事になります。利益が出てなくて納税がないということは内部留保ができていないということですので、どこかでつまずいてしまいます。1年間のためだけ会社を作るとかであればいいかもしれませんが、毎年毎年続けていくためには利益・内部留保が大切となってくることを忘れないようにしましょう。

そして、次は役員賞与の決め方です。役員賞与については、目標の利益を決めておき、その目標を超えたら支給するという考え方がいいのではないかと思います。

例えば、先ほどの例でいくと、経常利益の目標を100万円としてました。その目標の上にもう1つ目標を置きます500万円の目標を達成した場合に300万円の役員賞与を支給すると考えるのです。そうすることで仕事に対するモチベーションにもなるのではないでしょうか。目標を達成することで賞与がもらえると思うと、利益を稼ごうと思うようになるかもしれませんし、モチベーションのためにあらゆる工夫をするようになるのではないでしょうか。

このように役員賞与については、目標達成したときのモチベーションのような使いかたをするのがいいでしょう。役員報酬を支給するタイミングとしては、達成した翌年か達成した決算月に支給をすることになるのではないかと思います。というのも前回のコラムで説明したように、役員賞与の場合には事前確定届出給与という形であらかじめ税務署に届出なければならないということになっていますので、計画を立てた段階で達成すれば支給できるようにしておくか、達成した翌期に支給するかになると思います。

事前確定届出給与については、役員賞与を経費として扱うための方法になりますので、もし経費できなくてもいいということであれば、いつ支給してもらっても構いません。決算の時に損金不算入という形で経費としてみられずに税額の計算を行うということになるだけですので、支給すること自体は何の届出もなく支給してもらっても構いません。

まとめ

ここまで役員報酬と役員賞与の決め方について考えてきました。まず役員報酬については、税法上ではルールがあるということ、そして経営上で考える場合には計画を立てる方がいいこと。このように税法上での考え方と経営上での考え方に違いがあるのが大きいのではないでしょうか。税法上ではルールがありますので、役員報酬とされる範囲が経営上の考え方と少し違います。このようなことも加味しながら、目標利益などの経営上の計画をたて、役員報酬の額を決めていくということが大切になるのではないでしょうか。

税法上のポイントとしては、定期同額給与と事前確定届出給与を覚えてください。役員報酬・役員賞与を経費にするために大切です。経営上のポイントとしては、役員報酬の額をいくらにするのが良いのか、役員賞与の額をいくらにするのがいいのかについて、目標の利益額など計画を立ててもらうことが大切となると思います。 このコラムの内容が少しでも役員報酬を決める際の助けになればと思います。このコラムで書かれていることが全てではありません。私たちの考え方として、このような考え方で決めるのがいいのではないかなと思っているだけですので、様々な意見を踏襲して最終的に判断してもらえればと思います。

最後になりましたが、私たちトラストソルコンサルティング(東憲吾税理士事務所)伊賀市を中心に中小企業の経営者の悩みを解決するためのコンサルティングを行っています。「税理士業務ができるコンサルタント」として、税理士業務にとどまらず、資金繰りの支援や経営の支援、自計化支援なども行っています。今回のコラムの内容であるセカンドオピニオンについても受け付けています。顧問税理士を変えたいけれど直ぐには変えられないや、顧問税理士がアドバイスをくれないという悩みを抱えている経営者の方はぜひお問い合わせください。税務業務だけでなく会計コンサルティング・経営コンサルティングと幅広い業務をそろえています。興味のある方はお問い合わせください。

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