経営コラム~創業するために何が必要なのか~Part6|創業融資を受ける|銀行の種類と創業融資を受けるのにふさわしい銀行はあるのか|創業者向けコラム伊賀市の税理士が教える|

2025.09.26

初めに

今回のコラムでは、創業融資について考えていきましょう。創業を考えている方の多くは融資を受けたいと思っているのではないでしょうか。もしかすると、融資は必要ないという考え方の方もいるでしょう。このコラムでは、創業融資というタイトルにしていますが、既に事業を行っている事業者の方についても当てはまる内容になりますので、創業融資以外を考えている方も読んでもらえればと思います。

内容としては、金融機関の種類や融資の種類・資金使途(融資の使い道)についてになると思います。あまり細かすぎる話をしても仕方がないと思いますので、重要な部分に絞っていければと思います。

金融機関の種類

まずは、金融機関の種類です。みなさんは金融機関が何種類あると思いますか?何行ではありません。何種類です。金融機関にもそれぞれ銀行の規模・融資の規模・得意な規模があります。融資をする際にはそれらに注意をして相談をする必要があるのです。

金融機関には大きく分けて4種類ほどあります。

では、それぞれの特徴を整理していきましょう。

①都市銀行(メガバンク)

まずは、都市銀行です。いわゆるメガバンクというやつですね。例えば、みずほ銀行や三菱UFJ銀行などが当てはまります。みなさんも聞いたことがあるのではないでしょうか。

都市銀行はCMや街中でよく見かけると思いますし、口座を持っている方も多いと思います。しかし、融資だけを考えるとメガバンクは、創業時には圧倒的に不向きです。創業に関して言えば、ほぼ受けれないと思ってもらってもいいでしょう。

というのも、メガバンクの主な取引先は大企業だからです。得意な規模は数百億円~数千億円の規模を扱っています。簡単にいうと数百万数千万は相手にしていないということです。たまにメガバンクという理由で借入をしたいという方もいますが、ほぼ相手にされません。創業時に限って言えば、申し込みにいくだけ時間の無駄になる可能性が高いので、メガバンクは融資先から外しても問題はないでしょう。中小企業ではあまり借入をすることはないでしょう。

②地方銀行

次が地方銀行です。地方銀行は各地域の会社や住民のための金融機関と思ってもらっていいでしょう。例えば、三重県でいうと百五銀行や三十三銀行などあがあてはまります。比較的、都道府県単位で地域に根差しているといえます。地方銀行の取引先は、中小企業がメインと思ってもらっていいでしょう。中小企業は地方銀行から融資を受けることを考えるのが、もっとも効果的だと思います。しかし、創業時で考えると、銀行によっては創業融資を融資してくれるところもありますが、比較的審査が通りにくいというのが現状だと思います。地方銀行の得意な規模は数千万円~数億円になるでしょう。銀行によって色はでますが、創業時については融資の申込をするのは問題ありませんが、審査には比較的通りにくいと思ってもらった方がいいかもしれません。そのため、残りの2つで考えてもらうのがいいでしょう。

しかし、成長していくうえでは中小企業にとっては欠かせない存在の金融機関になりますので、口座を作っておくことなど関係をもっておくのは大切になると思います。特に成長していくためには、地方銀行から融資を引っ張れるかが重要となってきます。

③信用金庫・信用組合

次が信用金庫・信用組合です。これらも地方銀行とどうように地域に根差している金融機関と言ってもいいでしょう。地方銀行よりもさらにエリアは狭くなり、地域密着に近いといえるでしょう。信用金庫・信用組合で融資を受ける際には、組合員として加入することがほとんどだと思います。そのような違いが都市銀行や地方銀行のような銀行とあります。得意な規模は数百万円~数千万円と思ってもらえればいいと思います。そのため創業時の融資については、比較的受けやすい印象があります。特に信用金庫については、商工会議所や商工会とも連携をとっているところが多く、積極的に創業融資を行っているところも多いように感じます。創業時の融資の申込をするために良いと思います。融資金額については、都市銀行・地方銀行と比べて少なくはなりますが、創業時の融資額であれば問題はないでしょう。創業をするときの創業融資の候補としておススメします。

④政府系金融機関

最後が政府系の金融機関になります。代表が日本政策金融公庫です。政府が100%出資している金融機関になります。日本政策金融公庫は、年商5億円までの「国民生活事業」と年商5億円超の「中小企業事業」からなります。創業融資にも積極的ですので、創業融資の申込の第一候補と思ってもらっていいでしょう。創業融資の際にはまずは日本政策金融公庫から申し込みをしてもらえればと思います。ただ注意点としては、日本政策金融公庫のHPで該当する融資をみると上限額が書かれていると思いますが、この上限額はほぼ受けれないと思ってもらった方がいいです。創業融資であれば、自己資金の額にもよりますが、500万円~1,000万円までが限度とおもってもらうのがいいでしょう。

日本政策金融公庫の特徴は貸出のみで貯金制度がありません。つまり、口座を作るということはないということです。そのため、他の銀行口座を作っておく必要があります。

⑤まとめ

ここまで金融機関の種類についてみてきました。意外と知らなかったという方も多いのではないでしょうか?創業融資を考えた際の申込先としては、日本政策金融公庫と信用金庫と思ってもらえればいいでしょう。 創業時は、日本政策金融公庫と信用金庫をベースに考えてもらい、成長をしていく段階で地方銀行を視野に入れてもらうという流れになります。

創業時は、500万円~1,000万円(自己資金が多額にあれば別)程度の融資になると思いますので、あまり無理をして大きな銀行からは借りないようにしましょう。借りれないといった方が正しいかもしれません。

この他にノンバンクもありますが、企業経営を行っていく上でノンバンクで借りることは辞めましょう。というのも、ノンバンクは借りやすいということがメリットになりますが、ノンバンクからの借入があると①~④の金融機関で借入をする際に印象が悪くなる可能性が高いからです。もし、ノンバンクから借入るのであれば、最後の最後の手段くらいに思っておきましょう。特に創業融資に限って言えば、比較的金融機関から少額にはなってしまいますが、借入をしやすいので金融機関から借入をするようにしましょう。

資金使途(借入の使い道)

⑴資金使途の種類

次に資金使途についてです。資金使途とは簡単にいうと借入の使い道になります。大きく分けると5種類と考えてもらっていいでしょう。①運転資金②設備資金③季節資金④納税資金⑤赤字補填の五種類です。もっと細分化することもできますが、おおよそこの5種類で考えてもらえればいいでしょう。

それでは1つずつ簡単に説明していきましょう。

①運転資金

まずは、運転資金です。運転資金とは通常の業務を行っていくために必要な資金と思ってもらえればいいでしょう。通常の業務を行っていくために必要な資金とは、売上の入金と支払のズレというのが少なからず発生します。その際に、仕入の支払や人件費の支払が滞ってしまうと業務がなりたたなくなってきてしまいますよね?

そのズレを補うための資金と思ってもらえればいいでしょう。特に建設業や製造業のように入金までの期間が長い業種については、入金されるまでの間に何回か支払が到来すると思います。その穴埋めのために必要なものが運転資金といわれるものになります。現預金で確保できていれば、借入れる必要はありませんが、現預金の確保ができていなければ、借入を行って資金の確保を行うことになります。

入金を待っている金額が増えるにつれて、資金繰りは悪化していくことになりますので、運転資金の確保や入金と出金のサイトのバランスが大事になってきます。

運転資金とは、入金と出金のズレからくる資金繰りの悪化に対応するための融資の種類と思ってもらえればいいでしょう。

運転資金の返済原資は、入金される金額と支払われる金額の差額が返済原資となります。

②設備資金

次に設備資金です。設備資金は比較的わかりやすいと思います。設備投資をする際に使用する融資の種類になります。例えば、土地の購入や建物の購入・改装、機械の購入など事業に必要な設備を購入する際に使用します。

設備資金の特徴としては、返済期間が長期になるという点です。設備投資のための融資になるので、返済期間は比較的長めになります。

設備資金の返済原資は利益になりますので、利益を上げないと返済ができないことになってしまいますので、設備資金の返済分以上の利益の確保が大切になってきます。

③季節資金

季節資金は①の運転資金の一種類と思ってもらっていいでしょう。①は経常的な業務にかかるものに対する融資を指しますが、季節資金は季節によってかかってくるものに対する融資になります。

例えば、賞与の支払であったり、季節変動による売上に対応するために事前に在庫を確保するためのものであったりです。

このように毎月起こるわけではなく、季節的に起こる資金繰りの悪化を補填するための融資になります。そのため返済期間も半年~1年と比較的短いものになります。

これらの返済原資も①の運転資金と同じと考えてもらっていいでしょう。

④納税資金

続いて納税資金です。納税のために借入するの?と思われるかもしれませんが、決算で納税額が決まった後にお金が足りないということはよくあることです。納税資金は黒字であることが前提となりますので、使い道としては法人税・地方法人税・法人住民税になってきます。消費税や源泉所得税のための融資は基本的にはありません。理由としては、消費税は取引先から預かっているという性格をもち、源泉所得税は従業員から預かっているという性格をもつためです。預かっているだけですから、基本的には支払ことができるということです。

納税資金としての使い道は限られており返済期間も半年と短めではありますが、税金の滞納だけは避けなくてはなりませんから、納税資金が足りないときには利用することをおススメします。

この返済原資は利益になります。黒字であることが前提でありますので、金融機関としても貸しやすく、会社としても借りやすい融資ではあります。納税資金の融資を受けた後に赤字にならないように注意しましょう。

⑤赤字補填

最後が赤字補填です。基本的に金融機関の中で赤字補填という考え方の融資はありません。なぜなら赤字会社に返済能力がないためです。そのため赤字になると融資が通りにくいといわれるのです。その結果、帳簿を誤魔化して黒字に見せるように粉飾する企業が多いのです。ちなみにこの行為は脱税になる可能性がありますので、絶対にしないでください。

ただ、赤字補填の融資は絶対にされないかというと、そうではありません。一時的なものであったり、例外的なものであれば融資される場合もあります。そのほとんどがメインバンクが将来の回収可能性を考慮したうえで融資することになると思います。

それでも可能性としては低くなりますので、赤字補填にならないように利益を出せる体制をしっかりと構築していきましょう。

⑵資金使途違反

この資金使途の部分で大事になってくるのが「資金使途違反」になります。資金使途とは、融資を申し込む際に決めることになります。例えば、設備投資で融資を受けたいのか運転資金で融資を受けたいのかなどです。

この融資を申し込む際の資金使途と違った使い方をすることを「資金使途違反」言い、最悪の場合、一括で全額返済を求められることもあります。また、一括返済を免れたとしても返済が終わるまでは、次の融資を受けることができないなど厳しい処置をとられることがあります。

では、どのようなことが資金使途違反になってしまうのか、いくつか例を上げておきます。

①設備資金と偽り運転資金に使うパターン

もっとも多い資金使途違反の例といえるでしょう。設備資金は、額も大きく返済期間も長く設定できるため、融資としては有利な条件となりやすい資金使途です。そのため、設備資金で申し込み融資を受けますが、実際は運転資金のために使ってしまうというケースになります。

最近では、金融機関側も事前に防止をするようになっていますので、明らかな資金使途は少なくなっていますが、見積書を高い金額で書いてもらい、後でペイバックを受けるなどという事例もあったりしますが、これも立派な資金使途違反になりますので注意しましょう。バレないと思うかもしれませんが、決算書を見ればわかることです。

②融資前に設備代金を払ってしまうパターン

設備資金は順序がとても重要になります。基本的には、融資の入金があった後に設備代金を支払うという流れになります。この順序を逆にしてしまうと「資金使途違反」とされてしまうので注意してください。融資を受けてから設備代金を払うという順番を守るようにしましょう。銀行によっては融通が利く場合もありますが、もし順番が逆になる場合には事前に相談をしておくことが大事になります。

設備資金の場合には、この順序がありますので予定を逆算してたてていくことが大切になります。あらかじめ、必要となる日を決めておき逆算して融資の申込をする日を決めていくことになるでしょう。創業融資の場合には時間がかかることが想定されますので、6カ月は見ておくことがいいと思います。

③運転資金で借りたお金を流用するパターン

これもかなり多いと思います。運転資金として借りたお金を経営者に貸し付けるというパターンですね。決算書では役員貸付金として表示されますので、すぐに気づかれます。そして、この役員貸付金は金融機関がもっとも嫌がる勘定科目といってもいいでしょう。役員貸付金がある間は融資を受けにくくなってしまいますので、注意が必要です。もし、車や時計が欲しい場合には、銀行からの融資を流用するのではなく、役員報酬を上げてもらって個人で買ってもらうのが一番いいでしょう。

ここであげた3つのパターンについては、くれぐれも注意をしてください。資金使途違反とされるとダメージが大きくなりすぎます。今後の融資にも影響がでてきますので、資金使途違反だけはしないようにしましょう。

次回へ続く。。。

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