伊賀市の税理士が教える|会計コラム~資本的支出と修繕費について(その2)~

2025.07.10
修繕費文字

前回コラム

 前回コラム「会計コラム~資本的支出と修繕費について(その1)~」では、資本的支出と修繕費のそれぞれの意義について説明し、考えてきました。今回のコラムはその続きということで、資本的支出と修繕費の判断の仕方について考えていきましょう。

 前回コラムをまだ読んでいない方は、前回コラムのURLを張り付けておきます 。

前回コラム→会計コラム~資本的支出と修繕費について(その1)~

資本的支出と修繕費の判断

 それでは、さっそく本題に入っていきましょう。前回のコラムでは、資本的支出と修繕費について意義を考えてきました。法人税法基本通達の7-8-1と7-8-2にそれぞれの意義が載っていることをつたえたと思います。

 今回のコラムは、前回コラムの続きとして資本的支出と修繕費の判断方法から説明していきます。

①形式基準1

まず、資本的支出か修繕費かの判断について形式基準があります。形式基準としては2つ考えられますので、まず1つ目からいきます。法人税法基本通達7-8-3に記載があります。

法人税法基本通達7-8-3

 一の計画に基づき同一の固定資産について行う修理、改良等が次のいずれかに該当する場合には、その修理、改良等のために要した費用の額については、7-8-1にかかわらず、修繕費として損金経理をすることができるものとする。

(1) その一の修理、改良等のために要した費用の額が20万円に満たない場合(※1)

(2) その修理、改良等がおおむね3年以内の期間を周期として行われることが既往の実績その他の事情からみて明らかである場合(※2)

 この法人税法基本通達7-8-3に該当すれば、明らかに資本的支出であったとしても修繕費として計上してもよいとされています。

 中身について少しみていきましょう。

⑴※1の部分

 まずは1つ目の要件です。この部分は1件当たりの修理・改良の費用が20万円未満であれば、修繕費として計上してもかまわないということです。

 注意点としては1件当たりの考え方になります。この1件当たりは修理全体で1件と考えることに注意してください。例えば、窓の修理をする場合に、1つの建物に10枚の窓があるとします。1枚の修繕費は10万円とした場合の1件当たりは、建物1つの窓すべてで考えるので、10枚で1件という扱いになります。この場合だと1枚10万円の10枚なので、1件当たりの金額は100万円になりますので、20万円未満にはならないということです。

⑵※2の部分

 2つ目の要件の部分については、おおむね3年に1回の周期で行われていることが今までの実績からみて明らかな場合には修繕費として計上することができるということです。

 これは、修繕費の意義にあった「反復性」「予測可能性」と同じととらえてもらえればいいでしょう。おおむね3年に1回の周期で修繕を行っているのであれば、本来なら資本的支出であるものでも修繕費で計上しても構わないということになります。

②形式基準2

 もう一つの形式基準が法人税法基本通達7-8-4になります。7-8-4は資本的支出であるか修繕費であるかが明らかでない場合の方法について記載がされているものになります。

法人税法基本通達7-8-4

 一の修理、改良等のために要した費用の額のうちに資本的支出であるか修繕費であるかが明らかでない金額がある場合において、その金額が次のいずれかに該当するときは、修繕費として損金経理をすることができるものとする。

(1) その金額が60万円に満たない場合(※1)

(2) その金額がその修理、改良等に係る固定資産の前期末における取得価額のおおむね10%相当額以下である場合(※2)

これが法人税法基本通達の文章となります。中身についてみていきましょう。

⑴※1の部分

 この部分については60万円未満であれば修繕費として計上してもいいということになります。ただし、資本的支出か修繕費か明らかでない場合にこの規定が使えるのであって、全てに使えるわけではありません。また、ここの60万円未満の1件あたりの判定も先ほどと同じ判定になります。

⑵※2の部分

 この部分については、前期末における取得価額のおおむね10%相当額以下であれば修繕費として計上できることを表しています。この場合の「前期末における取得価額」とは前期までにその資産について資本的支出を行っている場合には、その金額も加味した取得価額ということになります。例えば取得価額が1,000万円の資産について、資本的支出か修繕費か明らかでない場合は、100万円程度の金額であれば60万円を超えていても修繕費にして構わないということになるでしょう。

③簡便法

 最後の方法は簡便法です。これは法人税法基本通達7-8-5に記載されています。

法人税法基本通達7-8-5

 一の修理、改良等のために要した費用の額のうちに資本的支出であるか修繕費であるかが明らかでない金額(7-8-3又は7-8-4の適用を受けるものを除く。)がある場合において、法人が、継続してその金額の30%相当額とその修理、改良等をした固定資産の前期末における取得価額の10%相当額とのいずれか少ない金額を修繕費とし、残額を資本的支出とする経理をしているときは、これを認める。

 簡便法として特例の立場として規定されています。簡便的に「修繕費3:資本的支出7」で分けて計上することが継続適用を前提に認められています。

 継続適用ですので毎年コロコロ変えることはできない点に注意が必要でしょう。「3:7」と説明していますが、実際は支出した金額の30%か前期末における取得価額の10%相当額のいずれか少ない金額を修繕費にして、残りを資本的支出として計上する方法です。

 例えば、支出金額300万円で取得価額が1,000万円の場合だと、支出額の30%は90万円で取得価額の10%は100万円となりますので、この場合90万円が修繕費に計上し、残りの210万円を資本的支出として計上するということになります。

④実質的に判定

 ①~③のどれにも当てはまらない場合には、実質的に判定していくことになりますが、なかなか判定をすることが難しい場合には、保守的に資本的支出として資産計上することが無難といえるでしょう。もちろんどれかの方法によって判断できるのであれば、その方法で判断してもらうのがいいと思います。

災害の場合の特別な取り扱い

 最後に災害の場合の特別な取り扱い法人税法基本通達7-8-6に記載されていますので、紹介しておきます。

法人税法基本通達7-8-6

災害により被害を受けた固定資産について支出した次に掲げる費用に係る資本的支出と修繕費の区分については、7-8-1から7-8-5までの取扱いにかかわらず、それぞれ次による。

(1)被災資産につきその原状を回復するために支出した費用は、修繕費に該当する。(※1)

(2)被災資産の被災前の効用を維持するために行う補強工事、排水又は土砂崩れの防止等のために支出した費用について、法人が、修繕費とする経理をしているときは、これを認める。(※2)

(3)被災資産について支出した費用(上記(1)又は(2)に該当する費用を除く。)の額のうちに資本的支出であるか修繕費であるかが明らかでないものがある場合において、法人が、その金額の30%相当額を修繕費とし、残額を資本的支出とする経理をしているときは、これを認める。(※3)

内容について簡単にみていきましょう。

⑴※1の部分

まずここの部分は当たり前だと感じるでしょう。その通りで災害により被害を受けた部分を原状回復するだけですので金額の多寡にかかわらず全額修繕費として計上できます。

⑵※2の部分

 ここの部分については修繕費として計上することが前提となっています。修繕費として経理する必要があるので、勘定科目も修繕費としておくことが望ましいでしょう。

 災害にあった資産を災害前の効用を維持するために補強工事等を行う場合は修繕費として計上することで金額にかかわらず修繕費として計上できます。しかし、修繕費として計上しない場合には、資本的支出となってしまう可能性があるので気を付けてください。

 また災害前の効用を維持するための補強工事等なので、単体で効用を有することとなる施設を新設する場合は新たな資産(資本的支出)となるので気を付けてください。

⑶※3の部分

 ここは先ほどの簡便法と同じ内容なのですが、違いとしては継続適用の要件がないということです。この災害により発生したときのみの適用を認めているので、翌年も簡便法で行わないといけないことはありません。災害が起きた事業年度のみの適用でも認められるというものになります。

このように災害が起きた際には別途規定が存在しており、通常の資本的支出と修繕費の判断とくらべると比較的緩い規定となっていますので、災害は起こってほしくはないですが、もし起こった時にはこのような規定があることを覚えておきましょう。

まとめ

 今回のコラムでは、資本的支出と修繕費の判断の方法について法人税法基本通達の内容を見ながら考えてきました。読んでいただいたらわかるように、非常に複雑な判断になるのではないかと思います。複雑な判断になるが故に税務調査としても引っかかりやすい部分となりますので、慎重に考えて処理してもらうのが良いでしょう。

 また名目ではなく実際(本質)で判断することにはなっていますが、証拠書類として工務店の明細書などの区分にも気を付けてもらえるといいでしょう。例えば、「修繕工事」とかかれているのと「工事」とかかれているのでは、ただ直しただけなのか新しく付加したのかがわからなくなってしまいます。修繕工事を行った場合には、工務店の明細書に「修繕工事」という文言をいれてもらい、工事前と工事後の写真なども一緒にもらっておくといいでしょう。工事が終わってしまったあとでは、工事前に戻っただけなのか元通りにしただけなのかが、外部からはわからなくなってしまいます。このような自己防衛のための資料も積極的に残していくことで、税務調査の対策にもなってくるでしょう。

 最後になりましたが、私たちトラストコンサルティング(東憲吾税理士事務所)伊賀市を中心にコンサルティングに特化した税理士事務所として活動しています。税務申告などの税理士業務だけではなく、経営コンサルティングや自計化支援、経営会議への参加など経営者の皆さまの悩み事を解決するための業務を主として行っています。詳しい内容はHPのそれぞれのコンサルティングのページを見てください。また、クラウド会計の導入(会計ソフトfreeeを標準採用)に興味がある方・導入したけれどうまく運用がいっていないという方についても一度お問い合わせください。

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