目次
初めに
今回のコラムでは、消費税減税による税務などへの影響について考えていこうと思います。食料品の販売がある企業については少し考える必要がでてきそうです。どのような影響があるかというと、一番大きな影響は本則課税か簡易課税かです。5,000万円の課税売上が無い場合には、簡易課税を選択できていました。ここについて考えていこうと思います。
本則課税事業者への移行特例
まずは、現時点において免税事業者や簡易課税事業者である者が、消費税率の引き下げにより仕入税額が大きくなることによって、還付申告を行える状況でも行えない場合に対応するための特例になります。
免税事業者や簡易課税事業者というのは、消費税納める義務がない若しくは、消費税を納める義務はあるが計算方法として売上のみを使っていることになります。
消費税の納付税額の計算は、預かった消費税(売上)から支払った消費税(仕入等)を引いた金額が納付税額となります。例えば、売上が1,000円で消費税が100円、仕入が500円で消費税が50円だった場合、100円ー50円の50円を納付することになります。
この引くことができる50円のことを仕入税額控除と言います。
簡易課税事業者の場合は、計算方法として預かった消費税に一定の割合を掛けた金額を仕入税額控除とみなす方法で計算します。
例えば、預かった消費税が100円で支払った消費税が150円の場合、本則課税を適用している事業者については、100円ー150円はマイナス50円となります。つまり、50円多く支払っているということです。この多く支払っている部分については還付という形で返してもらえます。
これに対して簡易課税事業者の場合は、預かった消費税の一定割合を納付するため、多く支払った部分が出てこないのです。例えば先の例で一定の割合が80%だったとしましょう。100円の80%の80円を仕入税額控除とみなすので、100円ー20円の納付となります。
簡易課税事業者は、納付の状態においては有利に働くことがあるのですが、還付の状況になっても還付を受けることができないというデメリットがあるのです。
今回の消費税率が下がることによって、ここに影響がでることになります。
いままでは8%だったため納付になる可能性が高かった業者であっても、1%になると還付になる可能性が高くなります。
例えば、売上が1,000円で消費税が80円、仕入が500円で消費税が50円の場合、現行の税率では納税は30円になります。簡易課税の適用事業者で80%が仕入税額控除とみなされる場合には、80円20%が納税額となるので16円の納付になります。納税下では、簡易課税が有利なのがわかりますね。
しかし、1%になった時を考えると、売上が1,000円で消費税が10円になります。これに対して仕入500円で消費税が50円の場合、本則課税なら40円が還付されることになるのですが、簡易課税では2円納税しなければならなくなるのです。
このように売上と仕入が同じだった場合に、消費税率が大きく変わることで還付と納付の状況が逆転する可能性があるということになります。
この状況にならないように、今回本則課税事業者への移行特例があります。
内容としては、①届出の提出期限を「課税期間の末日」に後ろ倒しすること②簡易課税の2年縛りを解除することの2つになります。
①届出の提出期限を「課税期間の末日」に後ろ倒しすること
①届出の提出期限の後ろ倒しとは、消費税の届け出の多くは前期末までに届け出を行うことが基本となっています。
例えば個人事業主で考えると、12月31日までに届け出を提出する必要があるということです。
今回に当てはめると、令和8年12月31日までに届出を提出しないといけないのですが、4月1日以降のことなんてどうなるかわかりませんよね?
そこで、令和9年4月1日の属する課税期間については、その課税期間の末日までに提出すれば、前年末に提出したこととみなされるという特例になっています。
先ほどの個人事業主でいえば、令和9年12月31日までに本則課税に変更するための届出を提出すれば、令和8年12月31日に提出したものとみなして、令和9年1月1日~12月31日まで本則課税の適用を受けることができるようになるということです。
後出しじゃんけんでOKということになります。つまり、令和9年4月1日の属する課税期間については、その課税期間の末(決算月の末)までにどちらが有利になるか判断して、提出すればよいということです。
前年に決めないといけないことが、当年の末までに決めることができるという有利な特例になります。
②簡易課税の2年縛りを解除すること
簡易課税の2年縛りというのは、簡易課税の選択をした事業者は必ず2年間は続けないといけないというものでしたが、令和9年4月1日の属する課税期間においては、この2年縛りを解除するということになっています。
つまり、現在簡易課税を選択している事業者で、消費税が下がることによって還付になる可能性が高い場合には、令和9年4月1日の属する課税期間であれば、2年縛りを気にせず本則課税に変更することで、還付を受けることができるということになります
ただし、この特例については飲食料品の譲渡を行っている事業者となりますので、10%課税の適用しかない事業者については特例の適用がないので注意が必要となります。
簡易課税制度の特例
次は簡易課税の特例です。先ほどの①は簡易課税の適用を受けている事業者が本則課税に変えて還付を受けたいという場合の特例になります。今回は、簡易課税のまま行くとどうなるのかという特例です。
1%の飲食料品の譲渡にかかる簡易課税制度については、納付税額が発生しないようにみなし仕入税額控除を把握することになります。先ほどのこの例で解説します。
例えば、売上が1,000円で消費税が80円、仕入が500円で消費税が50円の場合、現行の税率では納税は30円になります。簡易課税の適用事業者で80%が仕入税額控除とみなされる場合には、80円20%が納税額となるので16円の納付になります。納税下では、簡易課税が有利なのがわかりますね。
しかし、1%になった時を考えると、売上が1,000円で消費税が10円になります。これに対して仕入500円で消費税が50円の場合、本則課税なら40円が還付されることになるのですが、簡易課税では2円納税しなければならなくなるのです。
この時に2円の納税が発生していることになりますが、1%の適用を受ける部分については、売上の消費税と同じ額を仕入税額控除とみなすため消費税が発生しないことになります。
つまり、還付を受ける必要がない場合には、簡易課税制度にしておくことで、1%の売上にかかる納付税額は発生しないということになります。
10%の部分については通常の簡易課税制度と同じ計算式なる点について注意が必要になります。
なので、食料品の譲渡しかない事業者で現在簡易課税制度をとっているとしましょう。
この場合に、10%の仕入等が多い場合には、還付を受けることができるため①の特例を利用して本則課税の適用を受けるのがいいでしょう。
これに対して、10%に係る仕入等が少ない場合で還付を受けることができない状況の場合には、簡易課税を続けることで納付税額を0とすることができるということです。
食料品の譲渡しかない事業者で簡易課税制度の適用を受けることができる事業者については、納付税額0か若しくは還付を受けることができるかの選択になるということです。しかも、この選択を後出しでできます。
これはかなり有利な特例になってくるのではないかと思います。
ただ、判断を行うためには末日までに判断ができないといけないため、月次ベースでみれる必要があるでしょう。
例えば、決算の時にしか結果がわからないというような状態では、決算月を超えてしまっているため特例の適用が受けられないということです。
このような注意点を忘れずに判断をしていきましょう。顧問税理士の方と考えていくのがいいと思います。