選択的夫婦別姓制度について税理士の視点から考える|伊賀市の税理士|政治と税理士

2026.03.10

初めに

今回のコラムはいつもと少し違った視点にしてみようと思います。私たちのコラムでは、経営関係や税務関係の他に選挙などに関することについてコラムにしています。今回は、少し前から話題となっている選択的夫婦別姓制度について税理士の視点から考えてみたいと思います。

一時と比べると少し落ち着いた話題だと思いますが、この選択的夫婦別姓制度がもし施行されることとなればどのような問題があるのかについて税理士の視点から考えてみようと思います。

さきに私自身の考えを表しておくと、選択的夫婦別姓制度は反対です。

※以降あくまで私の私見です。

選択的夫婦別姓制度が及ぼす影響

①選択的夫婦別姓制度自体の問題

まず、選択的夫婦別姓制度がどのようなものなのかについて、法務省等の資料から簡単に説明をします。現行の制度では、男女が結婚するときには、男女が同じ氏(名字)を名乗らなければならないことになっています。ご結婚されたことがあるかたは経験されたことがあるのではないでしょうか。

つまり、現行の制度では結婚すると、どちらか一方はもう一方の氏(名字)を名乗らなければならないということですね。例えば、山田太郎と吉田花子が結婚する時に、山田姓を名乗るのか吉田姓を名乗るのかを選ぶということです。

これに対して、選択的夫婦別姓制度というのは、希望する夫婦が結婚後にそれぞれの結婚前の氏(名字)を名乗ることを認めるというものです。さきほどの例でいけば、吉田花子さんが山田姓を名乗りたくない若しくは吉田姓のままでいたいと思えば、吉田花子のままで結婚できるということになります。

選択的夫婦別姓制度の話題となったのが、結婚をする際にほとんどの場合、女性が男性側の姓を名乗ると思います。その時に全ての手続きで姓を変えるということをしなければならないことや、個人のアイデンティティなど、複数の負担があるということが始まりだと思います。

ここまで見ただけであれば、自由なのだから選択的夫婦別姓制度でいいのではないか?と思われるかもしれませんが、問題点もあります。それは子供の氏(名字)はあらかじめ決めておく必要があり、子供が複数いる場合には全ての子供にその決めた氏が適用されるということです。

どうゆうことかというと、山田太郎と吉田花子が結婚し、子供をもうけたとしましょう。そのときに子供をどちらの氏にするのかを決めないといけません。仮に子供の名前を山田にすると決めたとすれば、生まれてくる子供は、山田A男・山田B子・山田C男という風になります。この時点で、1つ屋根のしたに山田姓と吉田姓が混在することになります。

ここで疑問が生じると思います。吉田花子は山田姓にある理由でなりたくなかったのに、子供に山田姓を名乗らせるのか?逆もしかりで、山田太郎は子供にも山田姓を名乗らせたいのではないか?

つまり、親は自分たちの自由で選んだはずの氏(名字)を子供につけるときに必ず問題となるはずです。なぜならどちかしか名乗ることができないからです。この時点で選択的夫婦別姓制度が大きな問題となると思います。選択的夫婦別姓制度を選んで結婚したカップルごとに同様の問題が起こるはずだからです。こうなるとそもそも結婚をするということがなくなるのではないでしょうか。

では、このまま選択的夫婦別姓制度が続いたと仮定して先ほどの山田家?・吉田家?の続きを見ていきましょう。山田A男が山本甲子と結婚し、山田B子が林乙男と結婚し、山田C男が佐藤丙子と結婚したとしましょう。すると、山田家?・吉田家?の中がどうなるのか。

山田太郎・吉田花子・山田A男・山本甲子・山田B子・林乙男・山田C男・佐藤丙子がいることとなります。さらにそれぞれのA男・B子・C男の子供たちの氏を相手型の氏や山田氏とした場合にはもっと複雑になります。要するに○○家という考えがなくなるということですね。

この分、戸籍もかなり複雑となると言えるでしょう。これが選択的夫婦別姓制度です。

ここまでは、家の中での話や戸籍の話なので、○○家とかあまり考えてないとか、戸籍なんて気にしないという方は何とも思わないでしょう。次からは、これをもとに税務などで起こる問題を考えてみましょう。特に相続税が中心となります。

②選択的夫婦別姓制度が税務等に及ぼす影響

では、選択的夫婦別姓制度が税務に及ぼしそうな影響について考えていきましょう。

代表は相続税と所得税の配偶者控除や扶養控除になると思います。それぞれで見ていきましょう。

⑴配偶者控除・扶養控除

なぜ、これらに影響を及ぼすのか。それは、名前だけでは判断ができないためです。例えば、今までであれば山田太郎の配偶者は山田花子となるため、名字が同じであればある程度の判断はできたでしょう。なぜなら、現行制度であれば結婚する場合には氏(名字)を揃える必要があるからです。配偶者控除の場合には法律婚でなければ適用はされませんから、氏が同じであれば法律婚であるということが推測できたからです。

しかし、選択的夫婦別姓制度になるとどうでしょうか。吉田花子が配偶者と言われても、本当に配偶者なのかどうかわからないですよね。事実婚であれば配偶者控除の適用などは受けることができませんから、吉田花子が本当に配偶者なのかどうなのか戸籍をとって確認する必要がでてきます。扶養控除も同じで、親族であるかどうかを戸籍をとって確認する必要が出てくると思います。これだけでも、年末調整の時などに大きな負担となることが予想されます。

国会では、事実婚でも配偶者控除などの適用を受けれるようにするべきなどの意見もあるようですが、それは不可能だと思います。事実婚で配偶者控除を受けれるようになるのであれば、事実婚関係の相手が複数人いれば複数人分受けることができるようになってしまうわけですから、おそらく不可能でしょう。複数人いる場合には、1人になるというのであれば残りの人達はどうなるのでしょうか?アイデンティティの問題で選択的夫婦別姓制度を求めるのにアイデンティティの問題が発生するという訳のわからない状態になると思われます。

選択的夫婦別姓制度となると常に戸籍謄本なども持ちあるく必要が出てくるのではないかと推測されます。今回は税務での話ですが、例えば病院や学校に行くときも本当に家族なのか氏(名字)では判別できなくなりますから、常に戸籍謄本を取って提示しなければならなくなるでしょう。これをしなければ、偽った詐欺が流行ると思います。本当に家族なのかどうかの判断は戸籍を通じてしか確認できなくなるからです。

いままで何も考えずに家族と推測できていたのに、戸籍をもってしか判断されなくなるということになるので、すごく不便なこととなるのではないでしょうか。選択的夫婦別姓制度が進むことで年末調整などの税務にも大きな負担が生まれることは確実でしょう。この負担は中小零細の税理士事務所にとっても死活問題になりかねません。ただでさえ年末調整の時期は忙しくなるのに、そこにさらに負担が重なるとなると人手の問題や報酬の問題などが出てくると思います。インボイス制度でさえかなりの負担となっているのですから、なかなか現実的ではないのではないでしょうか。選択的夫婦別姓制度が始まるとなると税理士報酬も上がることになるでしょう。インボイス制度の開始以降でも税理士報酬はあがっていると思いますから、同じように上がることが想定されるのではないでしょうか。

⑵相続税

選択的夫婦別姓制度の影響が大きくなるのが相続税だと思います。相続税でまず必要なことが相続人の把握です。これが選択的夫婦別姓制度によってかなり複雑化することが想定されます。というのが、全く違い氏(名字)の方を探していく必要があるからです。相続税の申告の対象者としては、基礎控除等あるため比較的少ないと思いますが、2024年より登記が義務化されました。相続により取得した時から3年以内または遺産分割協議のあった時から3年以内に必ず登記をしなければならないことになったのです。以前までであれば、相続税の申告が必要ない人については相続の登記も重要な場所(家など)だけで、あまり関係のないところについては相続登記をしてこなかったという方や、そもそも相続登記をしておらず何世代も前のままという方も中にはいるのではないでしょうか。

これらが義務となり、違反した場合には10万円以下の罰則もあります。そのため不動産の登記を必ずしなくてはいけないこととなりました。そして、この不動産の登記をする際に必要なのが相続人全員での遺産分割協議書になります。

遺言書を作成していた場合、相続人がそもそも1人しかいない場合、法定相続分通りに共有名義で登記する場合には遺産分割協議書は必要なく登記ができるそうです。遺言書を作成していた場合や、そもそも相続人が1人の場合は問題ないと思いますが、法定相続分通りに共有名義で登記するということは、ほとんど行われないのではないでしょうか。おそらく複数人の相続人がいる場合には、それぞれ必要な不動産・欲しい不動産というものがあり、全てを共有名義で法定相続分通りに登記するということはないと思います。そんな後々問題になるようなことはせず、それぞれ単独の名義にするのが通常だと思います。

この時に必要になるのが遺産分割協議書になります。しかも、相続人全員です。現行法であれば死亡者の戸籍謄本を取ればある程度は分かりますが、選択的夫婦別姓制度になると相続人の把握だけでもかなり困難になるのではないでしょうか。なぜなら、全く異なる名字の方を何人も探さないといけなくなるからです。関係が深ければいいですが(兄弟とか)、関係が薄いとそれだけでもかなりの手間となるでしょう。現行法でも相続人全員にたどりつくのに大変なのに、選択的夫婦別姓となるともっと大変だと思います。今の議論では1世代でしか考えていないので選択的夫婦別姓の方が自由に見えますが、今後何世代にもわたる場合にかなりの影響がでるのではないでしょうか。こうなると自分たちだけではできなくなってくると思います。弁護士や司法書士に依頼する必要がでてくるため、相続税を払わなくても多くの費用が発生することになると想定されます。

登記情報についても、氏(名字)のことなる名前が複数でてくることになりますので、不動産が誰の不動産なのか全く分からなくなってくると思います。同じ家族で承継していっているはずなのに、毎回違う氏(名字)になるということもあるでしょう。ここまでややこしくする必要があるのかどうか疑問です。

この登記などの他にも、相続税にも配偶者控除があります。⑴と同じように配偶者であるかの確認をすう必要なども出てきますから、負担としては図りしれないものとなるでしょう。これらを調べるために時間も今以上にかかる可能性もありますし、報酬などの支払も多くなることが想定されます。

相続税については、戸籍関係が重要となってくる税金でもありますから、戸籍情報というものが分かりやすいほど楽になります。しかし、選択的夫婦別姓制度ではこの戸籍情報を破壊するような制度になりますので、非常に複雑で困難となる可能性が高くなります。このような多くの負担をかけてでも進めていくべき制度なのかどうかよくわかりません。

現行でも、旧姓の通称使用がほぼ全てのサービスで使用することができているため、なんの不自由もないはずです。結婚して戸籍上は相手がたの氏(名字)となっていても、ほとんどが旧姓のままで使えるようになっているので、旧姓のままでできるようになってきました。それで十分なのではないでしょうか。

個人の人権やアイデンティティも非常に大切なのはわかりますが、これほどの社会的負担をかけてまで行う必要があるのかどうなのかを議論してもらいたいですね。選択的夫婦別姓制度になることで、経理担当者や税理士事務所の負担はかなり多くなることは目に見えて明らかです。このような理由から私個人の意見としては反対の立場であります。

まとめ

今回のコラムは、いつもとは少し違った視点にしてみました。政治である問題を税務などに当てはめるとどのような問題が起こる可能性があるのかなど分かってもらえたのではないでしょうか。少数意見も大事なのはわかりますが、少数意見を救うことばかりになると大きな負担が同様にかかるということを踏まえての検討が必要だと思います。選択的夫婦別姓では明らかに税理士事務所にとってマイナスになる側面が大きいため制度実現はして欲しくないですね。

お問い合わせ

CONTACT

お問い合わせは以下ページから
お気軽にお問い合わせください。
通常3営業日以内に当事務所よりご返信いたします。

お問い合わせ・相談をする

24時間受付