役員報酬はどのくらいの金額がいいの?|伊賀市の税理士と考える|税務コラム|役員報酬の内容と影響、どのように決めるのかを考える|その1

2025.11.10

初めに

今回からのコラムでは役員報酬について考えていこうと思います。みなさんも経営者であれば役員報酬をいくらにするのがいいのかどのように決めるのがいいのか気になる方も多いのではないでしょうか。

まず、役員報酬について税法上どのような決まり・ルールがあるのかを解説してから、役員報酬はどのように決めればいいのか役員報酬の額が与える影響などについて一緒に考えていこうと思います。

役員の決まりの部分については、税法上の話になりますので少しつまらないかもしれませんが、重要な論点になりますので頑張って読んでみてください。

それでは本題へ入っていきましょう。

役員報酬について

まずは役員報酬について税法上どのような決まりがあるのかを解説していきます。

法人税法上は役員の定義役員報酬の種類の2つが重要となってきますので、それぞれ簡単に説明をしていこうと思います。

役員の定義

法人税法上の役員の定義は通常の考え方と大きくことなります。皆さん役員といえばどのような地位の人を思い浮かべますか?例えば、代表取締役や専務などを思い浮かべるのではないでしょうか。もしくは登記にされている方たちが役員と思うのではないでしょうか。

半分は正解だと思いますが、法人税法上にはそれ以外にも役員とみなされる「みなし役員」という定義があります。取締役や専務・監査役などは全て役員になりますが、それら以外にも役員に該当してしまう方がいるのです。この「みなし役員」に該当してしまうと、法人税法上の役員報酬のルールに当てはめる必要が出てくるのです。

では、みなし役員とはどのような方を指すのか例を上げようと思います。

①法人の使用人以外の者で経営に従事しているもの

まずは、法人の使用人以外の者で経営に従事している者です。例えば、会長とか相談役このような肩書の方が当てはまります。ここで重要なのは肩書よりも、「経営に従事している」かどうか、この経営に従事しているかどうかの判断が難しいのです。

経営に従事しているとは、簡単に言うと経営判断に影響を及ぼすかということになります。経営判断とは、例えば金融機関の融資とか、取引先との交渉や従業員や外注先に対する指揮命令があるかどうかということになります。

②一定の支配権を有している家族で経営に従事しているもの

細かい説明は省きますが、議決権を一定数以上有している親族で経営に従事している者も役員をみなされます。またここでも経営に従事しているという文言がでてきました。つまり、役員以外の者で経営に従事している者については法人税法上は役員とみるとおもってもらえれば問題ないでしょう。

すごく簡単にですが役員の定義について説明しました。取締役や監査役などの他にも、経営に従事している者は役員とみなされて、法人税法上の役員の規定の適用を受けることになると考えてもらえればいいでしょう。

ただ、この「みなし役員」という定義に該当するかどうかが税務調査では重要になってくるのです。法人税法上の縛りを受けますので、「みなし役員」に該当しているのに、従業員と同じような方法で給料を払っていたりすると否認される可能性もでてきますので注意が必要です。

ただの事務作業を行っているだけなど、経営に従事していると言えない場合には「みなし役員」とはならないので気にしなくても構いません。

⑵役員報酬の種類

続いて役員報酬の種類についてです、役員報酬に種類なんてあるの?と思われるかもしれません。役員報酬の支給方法について3種類あるのでそれについて解説していきます。

おそらく聞いたことあるという方も多いのではないでしょうか?

①定期同額給与

まずは、役員報酬の上で最も基礎的なものですね。定期同額給与と言って1月以内の期間に支給される給与が同額のものを言います。役員報酬は、利益操作の排除の観点から毎月同額である必要があるとされているのです。この定期同額給与は役員報酬の中でも基本ですので、経営者の方は理解されている方も多いのではないでしょうか。

役員報酬を改定することができるタイミングは2回とされています。期首のはじめと事業年度開始の日から3月以内です。みなさんも決算が終わった後に役員報酬をどうするのかを税理士の先生と相談しませんか?あれがこの定期同額給与の改定を行うためです。

決算の株主総会の際に金額を決めて、その次の給料から改定するということが多いのではないでしょうか。この定期同額給与についても細かいことを言い始めるとキリがないので、今回のコラムでは大筋だけにとどめておきます。

なお、この定期同額給与のルールを破ってしまうと、その差額部分について「役員報酬の損金不算入」という形で経費として認めてもらえなくなります

例えば、12月決算の法人で、1月~3月まで40万円で4月~来年の3月まで50万円の支給にするとします。このままいけば問題なく全額役員報酬として経費に認められますが、4月~6月までは50万円支払ったけど、7月~翌3月までは資金繰りが厳しいから30万円にしたとなると、4月~6月の50万円と30万円の差額の20万円×3カ月分について、役員報酬の損金不算入という形で経費に認めてもらえなくなってしまうのです。損金不算入となる場合には、基本的には少ない方の金額に合わせられることになりますので気を付けてください。

ややこしいと思った方は、事業年度開始の日から3カ月間と、4カ月目から翌期の決算までは同じ金額で払う必要があると思っておいてください。

ただし、期中から役員に昇格したことや、期中に役員を退任したことなどによる増減は認められますので経費として計上することはできます。このように細かいルールはあるのですが、それはまたの機会としておきます。

②事前確定届出給与

そして2つ目が事前確定届出給与です。これは、簡単に説明すると税務署にあらかじめ役員報酬の支払額を決めて報告をしておくことで支給することができる役員報酬になります。主に、役員賞与の際に使用することが多いです。経営者のみなさんも利益が多くでていたら賞与が欲しいと思ったりしませんか?役員は利益操作を排除するための観点から役員賞与は原則経費として認められません。しかし、この事前確定届出給与を提出しておくことによって、役員賞与についても経費として認められるのです。

事前確定届出給与は、株主総会から1月以内事業年度開始の日から4月以内いずれか早い日までに税務署に提出する必要があります。簡単に考えると事業年度開始の日から3カ月以内に提出と思ってください。

事前確定届出給与に記載する内容としては、毎月の役員報酬の金額役員賞与を支給する場合には支給する日付と金額を記載して提出します。そしてそこに記載した日に記載した金額を支給してもらうという形になります。

この場合も記載した金額と異なる金額を支給した場合には、役員賞与の全額が経費として認められないので注意してください。例えば、7月と12月に100万円づつ支給するという事前確定届出給与を提出したとして、7月には100万円を支給したが、12月には資金繰りにより50万円しか提出できなかったとなると、12月の50万円だけでなく7月の100万円についても経費として認められなくなってしまうのです。非常に影響力があるので、事前確定届出給与を提出して役員報酬を支払う場合には注意してください。

事前確定届出給与の難しい点として、来年を見据えて設定する必要があるということです。どういう事かというと、事業年度開始の日から3カ月以内に来期の決算までを予測しておかないと、利益が出なくなる可能性があるということです。利益を出したかったのに、役員賞与の支給で利益が出せないというような状態にもなる可能性があるということが難しいのです。次の利益も予測しながら役員賞与の金額を決める必要があるということになるのです。

考え方によっては、前期に利益がでた分を配分するみたいな形で来期の利益は気にせずに決めるという方法もありかもしれません。例えば、今期1,000万円の利益を出せたのだから、ご褒美に来期に役員賞与を200万円もらうみたいな感じですね。どちらが役員の方のモチベーションにつながるのかを考えて決めてもらうのが良いかもしれません。

③業績連動給与

そして3つ目が業績連動給与なのですが、これはあまりないと思うので説明は省略します。

役員報酬の種類として、中小企業では①の定期同額給与と②の事前確定届出給与が大きなウェイトを占めることになります。

このように役員報酬には種類があり、それぞれ同額給与での縛りやあらかじめ届出を提出しておかないといけないなどの縛りがあります。そのため役員報酬を決める際にはこれらの規制を理解しておくことが必要です。

次回のコラムでは、役員報酬の金額についてどのように決めるのがいいのかを考えていこうと思います。

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