目次
初めに
今回のコラムは、以前にコラムとして挙げていた「経営者必見!|経営コラム~数字に強い経営者になるための3つの視点~|利益がでない・お金が残らない・資金繰りの不安を解決する|その1|伊賀市の税理士が教える」の続きになります。
前回のコラムから時間がたっていますので、前回のコラムから読みたいという方・読み直したいという方は前回のコラムのURLを載せておきますので、そちらを参照してください。
前回コラム→
前回のコラムでは利益が出ないを解決するために、ブロックパズルを用いて利益の仕組みについて解説しました。今回は、残りの部分である、お金が残らない・資金繰りの不安を解決するためのコラムになります。
それでは本題に入っていきましょう。
キャッシュフローを意識する
次に数字に強い経営者になるためのポイントはキャッシュフローを意識するということです。経営者の方の中には、利益の部分までは考えられているけどキャッシュフローの部分まで考えられていないという方が多いように感じます。このような方の悩みで一番多いのが、「利益は出ているのにお金が全然残らない」ではないでしょうか?
この悩みも経営者の中で多い悩みの1つだと思います。この対策・解決としてはキャッシュフローまでしっかりと考えていくことだと思います。資金繰り表の作成の仕方については、別のコラムで説明することにして、今回のコラムでは、なぜお金が残らないように感じるのかについて考えていきましょう。
まず、キャッシュフロー(お金の流れ)と売上の計上のタイミングについて理解してもらう必要があると思います。業種によって多少の違いはありますので、今回は建築業で考えてみたいと思います。
お金の流れとしては、請求書の発行(売上分)→お金の入金→請求書受領(支払分)→支払という流れが理想だとは思いますが、ほとんどの場合はこの流れにならないのが経営の悩みだと思います。
売上の計上のタイミングとしては、請求書を発行したタイミングで計上されることになります。
例えば6月30日に100万円の請求書を発行したとしましょう。すると、6月30日に売上100万円が損益計算書上に計上されることになります。お金をもらっていないのに売上(利益)は計上されるのです。これを会計用語で実現主義といいます。
そして、6月30日〆の支払いの請求書50万円が届くとすると、6月30日に原価(経費)として計上されることになります。これを会計用語で発生主義といいます。つまり6月30日にお金の動きがないにも関わらず50万円の利益がでることになります。ここだけを見ると儲けることができていますよね。

次にお金の流れをみます。売上の入金は45日サイトで入金されるとすると、6月の売上の100万円が入金されるのは8月15日となります。ここで初めてお金が入ってきます。
しかし、仕入れについては30日サイトなので6月分の支払いは7月30日に支払う必要が出てくるのです。つまり他の経費を考慮しないとすると、7月30日の時点でお金はマイナス(足りていない)ということになります。

このズレが、利益は出ているのにお金が足りないと思ってしまうトリックになっています。このことを「勘定あって銭足らず」と表現したりします。
今回は売上と仕入だけで説明しましたが、ここに給料・経費・返済・税金と何種類も複雑にからまってくるため資金繰りがややこしく悩ませる原因となるのです。
さらに良くある失敗の例としてあるのが節税です。損益計算書上は利益が出ているため税金が発生することになると思います。この時に税金の支払いをするのが嫌で節税に走ろうとする経営者の方が多くいます。この節税という行為は、よく考えないと資金繰りを悪化させるものになります。節税をして税金を安くしたのに苦しくなっているようでは、なんのための節税か分けわからなくなりますよね?
では、どのような仕組みでその状況になるのかを考えてみましょう。
例として、売上100万円で経費等が70万円だったとします。この時の利益は30万円になりますよね。法人税等30%・消費税10%だったとすると、法人税等が9万円で消費税が3万円の合計12万円が税金となります。
つまり、今の状態で行けば12万円の税金を支払った後は18万円のキャッシュが残るということになります。
では、税金を払うのが嫌で0にしたい場合どうなるでしょう。30万円分の経費を捻出するしかないと思います。経費を捻出するということは、キャッシュが出ていくということになりますよね。こうすると確かに税金は0になります(正確には赤字でも発生する税金はあります)。しかし、キャッシュも0になってしまいます。
税金を支払った後にキャッシュが18万円残っているのと、税金はないけれどキャッシュもないのでは、どちらの方がいいですか?明らかにキャッシュが残っている方が安心できるのではないでしょうか。
今回は税金にだけ焦点を当てていますが、決算月の翌日に借入の返済がある場合や、取引先への支払・給料の支払がある場合には、キャッシュがないため払うことができなくなってしまいます。
このように節税といっても何でもかんでも節税すればいいという事ではないですし、タイミングが大事になってきます。節税によってキャッシュがなくなってしまっては、節税の意味もなくなってしまうからです。
このようなことでキャッシュがなくなり資金繰りが悪くなる会社は多くあります。節税と言えば聞こえはいいですが、キャッシュフローまでを考えないと状況が悪くなることがあるので、節税は慎重にしてください。しっかりと税理士と相談して、資金繰りなども加味して考えてもらってください。
自計化をする
3つ目のポイントは自計化することです。健康と同じで、自分自身の会社は自分自身で診るようにしましょう。よく記帳代行という形で税理士の方に丸投げしている企業も少なくありませんがおすすめしません。
なぜなら、会社の状況が悪くなっているのを知ることができるのが遅くなるからです。記帳代行の場合だと、資料を提出してから約1カ月程度はかかると思います。内容によってはもっとかかる時もあるでしょう。そのような状態だと自分の会社が悪くなっていることに気づいた時には遅いかもしれません。
逆も言えます。会社の業績が好調の場合にも知ることが遅いことでできたはずのことができないこともあります。例えば、節税こそが最たる例であり、決算を過ぎてからできる節税は限られていますし、金額も少額になってしまいます。早いタイミングで利益がどの程度になるのかを知ることで、決算賞与を出すことや、来期に購入予定の物を今期に早めるなどの節税を行うことが可能となるのです。
また、銀行融資を考えるのであれば最低でも3カ月~6カ月は見る必要があります。それが記帳代行で2カ月・3カ月遅くなっていると銀行融資を受けるための時間も長くなってしまいます。このような状態になることを避けるために自計化をしていくことが大切になります。
しかし、初めから自計化することは無理だと思います。そこで、顧問税理士で自計化を推進している事務所や自計化を一緒にしてくれるような税理士事務所を選んでもらうことで解決することができます。自計化は初めのうちは大変ですが、自分の会社の数字を知るという意味ではとても大切なことです。自計化をすることで、前回コラムの利益のことや、資金繰りの内容も理解できますし、生きてきます。自計化をして初めて経営という次のステップへ踏みだすことができると思ってもらっていいでしょう。
では、どのように自計化を進めていけばいいのか、一番は税理士事務所の方とともに行ってもらうことが早くて無駄がなくいいと思います。しかし、税理士事務所が対応していないとか、それだけの顧問料を払うことができない場合には自分自身で行ってもらうしかないでしょう。そのようなときに、どのようにしていけばいいのかを今から簡単に説明しましょう。
まずは、経理業務の洗い出しです。どのような経理業務があるかをすべて洗い出してください。例えば、請求・支払・給与計算などなど色々な業務があると思います。まず何の業務があるかを考えることが大事です。
そして次に、それぞれの業務で行っていることを洗い出してください。なるべく日付とやり方はまとめてもらうほうがいいでしょう。例えば、毎月30日に売上の請求を行う。給料計算は毎月20日して、25日支払などです。このように洗い出してください。
そして、どの業務が会計業務と結びついているかを確認して、それぞれ結びつけていきます。こうしていくことで自計化ができるようになってきます。自計化ができない最大の原因は何をすればいいかわからない、何からすればいいかわからないことだと思います。
そして、使用する会計ソフトに入力をしていくという流れになります。会計ソフトによっては自動で取込みができるものなどもあるので、そのような会計ソフトを使用してもらってもいいでしょう。
このように自計化をしていって、毎月の試算表が翌10日以内で出せるようになると立派だと思います。何も怖いことはないでしょう。ここまでくれば、次にやることは経営をいかにしていくかを決めていくことです。分析などもリアルタイムで行えるようになっていきます。こうなれば数字はもう怖くないでしょう。
まとめ
ここまで数字に強い経営者になるためのポイントを3つに分けて考えてきました。この3つができるようになれば数字は怖くありません。むしろ面白いと思えるでしょう。経営を操れるようになってくるに違いありません。数字が苦手な経営者の方も多いですが、経営者であれば数字に強くないといけません。税理士頼みとかではいけないのです。経営者自身が強くある必要があります。
最後になりましたが、私たちトラストソルコンサルティング(東憲吾税理士事務所)は伊賀市を中心に中小企業の経営者の悩みを解決するためのコンサルティングを行っています。「税理士業務ができるコンサルタント」として、税理士業務にとどまらず、資金繰りの支援や経営の支援、自計化支援なども行っています。今回のコラムの内容についても経営者の方に身に着けてもらうよう支援もしています。自計化支援については基本的にはクラウド会計ソフト「freee」を使用していますので、クラウド会計などに興味がある方・自計化を目指している方・経理業務を楽にしたいと思っている方など、興味があればお問合せください。