
目次
⑸どのように
そして最も重要になってくるのが「どのように」です。戦略となる部分です。ここまで、「なぜ」で理念・目的を考えました。「何を」「誰に」「どこで」「いつから」で、商品・サービス自体の物を決めました。そして、「どのように」です。事業戦略においては比較的多くの著書が世の中に出ていますので、どれが正解でどれを行うべきというのはケースバイケースのため選ぶのは難しいでしょう。しかし、有名どころとしては次の3つくらいに絞られるのではないでしょうか。
- 低価格戦略(コストリーダーシップ戦略)
- 差別化戦略
- ニッチ戦略
この3つくらいで考えていくのがいいと思います。
①低価格戦略
まずは、低価格戦略になります。創業する方はあまり考えない方がいい戦略になります。どのような戦略かというと、大量仕入によって原価を下げることで低価格(コストダウン)を目指していく戦略と考えられます。例えば、マクドナルドをイメージしてもらえるといいと思います。
低価格下での競争となるため、創業間もない企業では太刀打ちできません。創業当初には選択するべきでない戦略となります。
低価格戦略を実現するためには莫大な費用がかかるので、創業間もない資金源が乏しい企業は選ぶべきではないでしょう。
②差別化戦略
この戦略は差別化をすることでブランド力を向上させる戦略となります。例えばモスバーガーを想像してもらうのがいいのではないでしょうか。
差別化戦略のメリットとしては、他社と差別化を図りブランド力をあげていますので、高価格で売れる可能性があるということになります。ブランド力のために高級感のある店舗づくり・接客の良さ・希少性など必要となりますが、考え方1つでどのような形にもなる戦略といえます。創業間もない企業であっても不可能ではない戦略になります。
では、どのように差別化戦略を考えていけばいいのかということです。そのためにはSWOT分析を行いましょう。⑴の「何を」で説明したものと同じものになります。
⑴では商品・サービスを考えるために自分自身のSWOT分析を行っていただきました。次は、「何を」「誰に」「どこで」「いつから」の要素も含めたSWOT分析を行ってもらいます。ポイントは⑴の時と同じですので割愛します。これらのSWOT分析で出た、「強み」「機会」「弱み」「脅威」これらをクロスして考える方法を「クロスSWOT分析」といいます。クロスSWOT分析を行うことで「強み」×「機会」・「強み」×「脅威」・「弱み」×「機会」・「弱み」×「脅威」の4種類に分けることができると思います。
このうち「弱み」×「機会」と「弱み」×「脅威」の部分については、創業で目指すべきものではないはずです。「弱み」×「機会」でとるべき戦略は弱点の克服になります。そもそも弱点のところで創業する必要はないですよね。「弱み」×「脅威」は撤退戦略になります。創業当初から撤退するようなところで勝負する人はいないでしょう。よってこの2つについては、創業時に考える必要がない部分になりますので、無視しましょう。ただ、書き出すことは大切なので、書き出すだけ書き出すようにしましょう。
創業時に注目したい部分は、「強み」×「機会」と「強み」×「脅威」になります。この2つについて、少し見ていきましょう。
⒈「強み」×「機会」
まずは、こちらからです。ここの部分については、自分自身の商品の強みであり、さらに市場にもチャンスがある、流行りの流れに乗れるという部分になると思います。つまり
ここで勝負する場合には積極戦略になります。今の考えのままにガンガンにせめて行くことになるでしょう。むしろ流れに遅れないように早いタイミングで積極的に勝負を仕掛けて稼げる力をつけましょう。積極戦略のポイントとしては、認知度がどの程度あるのかによっても稼げる力が変わってくると思います。そのため認知度がない場合には、広告宣伝に力をいれるなど、自分自身のアピールをしていくことが大切になってきます。
強みとチャンスが重なっている部分ですので、逃さないようにしていきましょう。
⒉「強み」×「脅威」
こちらの戦略が差別化戦略となります。自分自身の商品・サービスに強みはあるけれど何かしらの脅威も存在しているために、衰退期に巻き込まれないように差別化をして特定層を獲得していく必要があります。私たちの税理士業界はまさに差別化戦略の業界です。自らの強みを生かして、他事務所と差別化を図っていかなければ生き残っていけません。
税理士業界では、市場としては成熟しきっていますし、AIにとって代わる業種の上位にもでてくる業界になっています。まさに脅威そのものです。その中でもクラウド会計であったり、経営コンサルティングであるなど、今までの税理士業務には無かった考え方・新しい商品が登場してきました。
衰退期に巻き込まれないためにも、クラウド会計やコンサルティングなど今までの税理士業務とは違った業務による付加価値(差別化)を行っていくことが大切な業界だといえます。つまり、今まで通りでは駄目だということです。思考の転換・新しいことへのチャレンジが必要ということがわかるのではないでしょうか。
このように、脅威の裏側は機会ともいえるのです。差別化戦略とは、脅威を機会に変えるための戦略といってもいいでしょう。脅威を機会に変えることによって「強み」×「機会」に代わります。実は、「強み」×「脅威」には将来的な機会が含まれている可能性があり、そこを見出すことで大きな成長へとつなげられる可能性を秘めていると考えられるのです。
このようにSWOT分析をすることで、どのような差別戦略をとるべきなのか、積極戦略をとるべきなのかが変わってきます。2つの戦略によって全く行動が変わるのでSWOT分析でどちらがあっているかを確認してみましょう。
⑶ニッチ戦略
そして3つ目はニッチ戦略です。ブルーオーシャン戦略ともいえるでしょう。創業期は資金面でも脆弱ですので幅広い展開ができません。そこでレッドオーシャンで戦うのではなく、ブルーオーシャンを探して戦っていくべきです。
ニッチ戦略は、創業期の企業にとってもとても使いやすい戦略になるでしょう。
ニッチとは、隙間や窪みという意味のように誰もいない、誰もしないような分野を探して行うことです。差別化戦略と近い感じになってくるのではないかと思います。○○専門なんかがニッチ戦略の代表核となってくるでしょう。
ニッチ戦略の良い点は、資源を集中できることです。例えば、ラーメン屋としてしまうと、醤油ラーメンから味噌ラーメン、とんこつラーメン、チャーハンなど色々作る必要があるように感じてしまいますが、とんこつラーメン専門店としてしまえば、その1つに全てを集中することができますよね。一蘭なんかその典型例だと思います。ほぼ1メニューのみであの規模まで成長するのですから、集中戦略というのはとても大事なように思えます。
このように、1つに集中できるように分野を決めてしまうことも創業期には大事になってきます。あれもしたいこれもしたいとなるかもしれませんが、まずは集中的に資源を投資して、成長した後に広げていけばいいのではないでしょうか。
経営学者であるドラッカーの本にも「やらないことを決める」ことが大事であると書かれています。やらないことを決めるというのは、意外と難しいです。あれもこれもと気が付けば増えてしまっています。お客さんが本当に来るのかどうか心配になってしまうんですよね。
私の事務所でもやらないこととして、「相続税の申告」と「記帳代行」を決めました。しかし、その2つしか決められませんでした。もっと省きたいことがあっても、お客さんがつかなかったらどうしようとかを考えると、やらないことを決めるというのは非常に難しいということを実感します。
それでも、少しでもやらないことを決めるだけで、集中できる分野を作ることができますので、創業当初は少しだけでも十分だと思います。
少し話がずれましたが、ニッチ戦略とは、集中する分野を決める・やらないことを決める戦略と思ってもらえればいいでしょう。
ニッチ戦略のいい点は資源を集中できることですが、悪い点としては集客できるかどうかだと思います。あまりにもニッチすぎると、集客の分母ない場合が起こりえますので、そこは注意が必要です。ここを乗り越えることができるサービス・商品があれば、ニッチ戦略は大いに創業時でも戦える戦略になるでしょう。
まとめ
ここまでが創業までに考えておくべきことになります。
どうでしょうかかなり考えないといけないことがあるでしょう。しかし、創業とはそれだけ大変ということです。正確に言えば生き残っていくためにはです。すぐに廃業しても構わないのであれば、いきあたりばったりで創業すれば十分でしょう。しかし、そんなわけにもいきません。生き残っていくためには、創業の段階で十分な戦略を考えておきましょう。
次のコラムでは、差別化戦略・ニッチ戦略の代名詞ともいえる戦略であるランチェスター戦略について考えていこうと思います。詳細については次のコラムでしますが、ランチェスター戦略とは、もともと戦争のために考えだされた理論を経営に当てはめられたものです。創業時の企業にとっても、使うことができる戦略となっています。
それでは、また次のコラムでお会いしましょう!