目次
初めに
税理士事務所である私たちがこのコラムを書くというのも少し不思議な感じがするかもしれませんが、実際に多くの経営者の方で顧問税理士を変えたいんだけれど、変えられないという事態に直面をしている方も多いのではないでしょうか。
顧問税理士を変えたいと思われる、よくある理由をもとに考えていこうと思います。実際、私たちの事務所でもこの理由に当てはまって解約をされないように注意しながら業務を行っています。顧問税理士との付き合いが長い方にとっては、顧問税理士を変えたいと思ってもなかなか踏み出せないという方もいると思います。税理士は経営の心臓部分であるお金・税金に深く関わる職業であるため、顧問税理の選択というのは、企業にとって慎重に選択をする必要があるのではないかと思います。
今回のコラムでは、税理士を変えたいと思われる理由と顧問税理士を変える場合のタイミングについて考えていきましょう。
顧問税理士を変えたいと思われる理由
まずは、顧問税理士を変えたいと思われる理由についてです。その理由は何種類かあると思います。私たちの事務所では次のような理由を想定して、業務を行っていますので、私たちの事務所では、それらの理由に対してどのように対処しているのかも記載しようと思います。
①コミュニケーションが取れない・遅い
まずは、コミュニケーションが取れない・遅いという理由です。コミュニケーションを取りたくても取れなかったり、連絡の返信が数日たった後になるや、そもそも解答が返ってこないということもあるのではないでしょうか。また、相手の税理士よっては相談しづらい・話にくいという方もおられると思います。特に年上の税理士となると余計に話しにくく感じてしまうこともあるのではないかと思います。
企業の税務を見ていくなかでコミュニケーションはとても大切になってくると思います。例えば、節税のアドバイスを受けたいとか、経営に関しての相談をしたいなど様々な悩みが経営者の方にはあるのではないでしょうか。
その中でコミュニケーションが取りづらいとなると、相談がしにくいという環境が生まれてしまいます。中小企業の経営者の相談相手の1位は「税理士・公認会計士」です。つまり中小企業の経営者の方は税理士の方に相談をしたいのだと思います。しかし、その相談もできないとなると、顧問税理士を変えたいという流れになってしまってもおかしくはないでしょう。
しかし、このような状況はよくあることです。返事が遅いというのは、事実を調べていたり顧問先に訪問していたり、繁忙期など様々な理由があると思うので仕方ない部分もあると思いますが、相談しにくいや親身になってくれないとなると話は違うと思いますが、現実的には顧問税理士を変えたい理由ということであるのです。
私たちの事務所では、この問題を解決するために顧問先の方との定期的な面談の時間を設けています。税理士報酬の額により回数はことなりますが、半年に1度・3カ月に1度・1カ月に1度の3パターン考えています。定期的にコミュニケーションをとることで、顧問先の方からの信頼も得られますし、お話をする機会になるので相談をしやすい環境を整えることができていると思います。また、顧問先数を制限(15社程度)することで、1つの顧問先の対応時間を確保することが可能となっています。
また、顧問契約を結んでいただいている顧問先の方の相談方法については、定期的な相談の他にChatworkを用いた相談を随時受けていますので、気になることがあれば相談できる仕組みを整えています。
このように、コミュニケーションをとれないという問題を解決するようにしています。
②節税の提案などのアドバイスをしてくれない
この理由も多いのではないでしょうか。これは①とつながる話だと思います。コミュニケーションがとりにくいから、そのような話にはならないということではないでしょうか。
節税については、税理士だからといって全ての節税商品や方法を把握しているわけではありません。また、経営者の方によって節税への考え方や限度が違うため、なかなか税理士側から提案をするということは少ないかもしれません。なので、節税については経営者の方のほうが色々なところから情報を仕入れていると思うので詳しいと思います。顧問税理士の方に「このような節税ができると聞いたんですが、どう思いますか?」などのようにアプローチしてもらうのが確実でしょう。そうすることでコミュニケーションにもつながり、①のコミュニケーションが取れないという問題も解決すると思います。
ただ、税理士の中には提案された節税について、なんの根拠もなしに否定する方や自分が思っている節税以外は認めない方もおられますので、そこはよく話あっていただくのがいいと思います。節税といっても意味のある節税・意味のない節税、節税のタイミング、節税のための資金面など検討する必要があることがたくさんありますので、節税を進める場合には顧問税理士の方と相談しながら進めてもらうのがいいでしょう。でないと損する節税をしてしまう可能性も大いにあるので注意してください。
経営のサポートについても、顧問税理士にどんどん聞いてもらうのがいいでしょう。聞いても答えが返ってこないということは分からないということだと思いますので、どうしようもないと思います。
経営者の皆さんが持っている情報を顧問税理士と共有していただいて考えていくことがいいと思います。経営のサポートについてもどのようなことが知りたいのかを伝えてもらうのがいいでしょう。経営者によって考え方やタイプが様々なため、顧問税理士側から積極的に提案するということは、顧問税理士の方にもよりますが少ないかもしれません。このギャップが、提案をしてくれないと思われる原因なのかもしれません。
私たちの事務所では、コンサルティングに力をいれていますので、財務コンサルティングでの契約をしていただくことで経営のサポートを積極的に行うようにしています。経営のサポートには、財務分析を行って会社の強味・弱みを把握し、会社の戦略をともにたてていくことや、銀行融資の支援など経営の核となる部分について、経営者の方とともに考えていくようなサービスがあります。
節税については、私たちの事務所で用意しているものについては、提案させていただきますが、知らないこともたくさんあるので、毎月の面談の際にコミュニケーションをとることで相談をしてもらえるような機会を作るようにしています。面談の際に相談してもらうことで、その節税が有利に働くのか無駄になるのかなどを検討していきます。節税とは、ほとんどが税の繰り延べですので、いつかは払わなけらばならないことになりますので、出口(繰延の終わり)とタイミングを考えることが非常に重要となります。無駄な節税にならないようにサポートしていきます。
③報酬とサービスのバランスがあわない
この理由も多いと思います。この理由についても①と②が絡んできているのではないでしょうか?税理士報酬を払っているのに、コミュニケーションがとりづらかったり、提案をしてもらえないと税理士報酬が高く感じてしまうと思います。
みなさんは税理士報酬に相場はあると思いますか?
私たちの事務所では税理士報酬に相場はないと思っています。その理由としては業務範囲が広すぎるから比べようがないということです。そこで言えることは、経営者の皆さんが税理士に何を求めているのかを考えてもらい報酬と比べてもらうのがいいでしょう。
例えば、記帳代行と申告さえしてもらえればいいのか、経営コンサルタントのように経営に関するアドバイスも欲しいのか、資金繰りや経営計画などの経営の核に関わることまでして欲しいのかなどです。
税理士報酬はピンキリです。同じ事業規模の顧問先でも数千円~の事務所もあれば10数万円という事務所もあります。その違いは何かというとサービスと1つの顧問先にかけることができる時間の違いだと思います。
例えば、月額1万円の事務所と月額10万円の事務所を比べるとして、月額100万円の時の顧問先数を考えれば、月額1万円の事務所の場合には100社必要になりますが、月額10万円の方では10社で到達するわけです。1カ月に100社見る事務所と1カ月に10社みる事務所を比べるとどちらの方が1つの顧問先に時間をかけてくれると思いますか?どちらの方が高品質のサービスになると思いますか?答えは明らかだと思います。
月額1万円で100社を見ている事務所にコンサルティングや資金繰り表などを頼んでも時間がないため受けられないと思いますが、月額10万円で10社のところであれば、コンサルティングや資金繰りなどの時間がかかる所にも手を出すことができるのです。このように税理士報酬によって全く業務が異なってくるので、税理士報酬に相場はないと思います。
なので、自分が何をしてもらいたいかによって、報酬も事務所も変える必要があるのです。しっかりしてもらおうと思うと、それなりに報酬もかかってくるということになってしまうのです。自分自身がかけることができる報酬の限度を決めて、一番近い税理士を探してもらうのがいいでしょう。ただ、報酬が高いから良い税理士という訳でもありません。税理士との相性などもあると思いますので、報酬と合わせて判断をしてもらうのがいいでしょう。
私たちの事務所は顧問先数を制限しています。その理由は顧問先の悩みを解決するためには時間をかける必要がどうしてもでてくるためです。私たちの事務所はコンサルティングに力を入れていますので、資金繰りや財務分析・銀行融資や経理改善などのために1つの顧問先にかける時間をとれるように設計しています。そのため報酬も高くなってしまっていますが、時間をかけられる分サービスの質もあがるためお客様からは好評をいただいています。
また、コンサルティングに力をいれるために私たちの事務所では記帳代行を受けていません。基本的に自計化をしていただいています。自計化をするための支援はもちろん行っています。自計化していただくことで、早い段階で数字を知ることもできますし、数字を気にしてもらうことで経営判断をおこなってもらうことも可能となっています。体の健康管理と同じで、自分自身で健康管理をしていくべきだと思います。自計化が企業にとっては企業の健康管理になっているのです。
自計化を推進している理由のもう1つとしては、顧問税理士を変えやすいようにするためです。というのも、顧問税理士との相性が合わなかった場合や、今回のコラムのような理由により変えたい場合に、記帳代行にしていると顧問税理士を変えづらくなってしまうからです。記帳代行の場合だと新しい顧問先にはデータの移行はしづらいですし、税理士の先生によって入力の方法が全く異なる可能性もあるからです。自計化してもらうと顧問税理士が変わったとしても、記帳は自分たちでできるので変更に対する障壁がなくなるのです。このような問題を解決するために自計化を推進しています。
少し話がずれましたが、私たちの事務所は高報酬・高付加価値をもとに行っています。報酬は高くなる半面、1つ1つの顧問先に時間をかけられるため、顧問先様の問題を解決することができるような仕組みを作っています。
④時代が古すぎる・新しいことに対応してくれない
この理由は特に世代交代をした経営者の方に多いのではないでしょうか?
世代交代で若い世代になった経営者の方が、経営者という立場になって経理周りのことを初めて知るということも多いと思います。その時に、いまだに伝票で記帳をしているとか昔の会計ソフトのままで効率が悪いと思うこともあると思います。
最近ではクラウド会計などの便利な会計ソフトも誕生していますが、年配の税理士の方では対応してくれないこともあると思います。クラウド会計を導入したいとか、ITの技術で効率化を図りたいと考えている若い経営者の方にとっては、顧問税理士を変えたいと思う理由になってしまうかもしれません。
税理士業界の平均年齢は60歳を超えていますから、IT関係には非常に弱い業界でもあります。若い経営者の方にとってはコミュニケーションが取りづらく感じてしまうという理由にもつながっているのかもしれません。
私たちの事務所では、クラウド会計「freee」に対応しています。「freee」の認定アドバイザーの資格もとっていますので、導入から使えるようになるまでの支援を行うことも可能です。また、税理士の年齢も30代と比較的若いため、ITにもまだ強い方だと思います。税理士としての経験は浅いですが、新しい考え方・新しいツールを用いて、顧問先様の効率化の支援等も行うことが可能です。
⑤信頼感を持てない
信頼感の理由としては、上から目線で話されるとか、自社の事業について理解がないなどによって起こるのだと思います。おそらく税理士の先生からすると、上から目線で話ているつもりがなくても、話し方や雰囲気で経営者の方からすると上から目線で話されているように感じるのでしょう。しかし、経営者の方にそのように思われる時点で税理士の方がダメなのだと思います。
税理士は経営者のパートナーとなるべき存在ですから、経営者の方と対等に話せる関係である必要があると思います。どちらかが上でどちらかが下という関係では経営パートナーとしてはうまくいかないでしょう。
自社の事業について理解がないという点については、税理士にも得意業種・専門業種がありますので、顧問税理士になってもらう前に聞いてもらうのがいいと思います。税理士の実務経験を積む中で関わることが多かった業種というものについては、詳しくなる傾向にありますが、関わったことがない業種については知らないことが多いと思います。幅広い業種を持っている税理士の方もいますが、税理士の全ての人が全ての業種に強いわけではないということを分かっていただくのがいいでしょう。特に、建設業や農業、NPO法人や福祉関係の事業などは専門性が強くなってしまいますので、得意な税理士・専門にしている税理士の方でないと、なかなか理解をしてもらうことが難しいと思います。顧問になってもらう前にどの程度業界について経験があるかを聞いてもらうのがいいでしょう。
私たちの事務所では、毎月の面談を通じてコミュニケーションをとるように心がけています。コミュニケーションが多くなると自然と上下関係はなくなると考えているからです。お互いの考え方を理解することによって関係はよくなると思いますし、逆にお互いが理解をしないと関係は悪くなると思います。税理士の年齢が30代と比較的若い年齢ですが、年上の経営者であっても厳しく接するときもあります。それも関係ができているからこそできることだと思っています。
また、私たちの事務所では対応しない業種というものを決めています。その理由としては、今までに経験がないということと専門性が強いということからです。具体的な業種を上げますと、農業・福祉業・公益法人・NPO法人・一般社団法人になります。
得意な業種としては、建設業・製造業・運送業・飲食業になります。このように業種を制限しているのも1つ1つの顧問先様によい高品質のサービスを提供できるようにと考えているからです。
まとめ
税理士を変えたい理由のほとんどがコミュニケーションによる問題であることだと思います。話にくい・相談しにくいや返事が遅いなど、コミュニケーションが経営者と税理士にとってどれだけ大切かということがわかるのではないでしょうか。
税理士は経営者のパートナーであるべきです。経営者の相談相手であるべきだと思います。そのような税理士がコミュニケーションをとれないということは契約を解除される理由になってしまっても仕方がないのかもしれません。
これらの理由の他にも大きい税理士事務所では、担当者が頻繁に変わることなどが変えたいという理由になってくるかもしれません。それ以外にも理由というのは色々あると思います。このような変えたい理由があるなかで、どのタイミングで税理士を変えればいいのか・どのように顧問税理士を変えればいいのかについて次回のコラムで考えていこうと思います。