目次
初めに
今回のコラムでは、私たちの事務所でも扱っている生命保険についてです。私たちの事務所においても生命保険の代理店として、NN生命と大同生命の2つを扱っています。税理士事務所が生命保険の代理店となっている事務所が意外と多いものです。そのため、顧問税理士や税理士事務所の方から生命保険についての提案を受けたことがあるという方も少なくないのではないでしょうか。
今回はこの生命保険について、企業防衛という観点から提案を行っている私たちの事務所の考え方について説明しようと思います。
ここでの注意点としては、必ずしも全ての税理士事務所がこの考え方に基づいて提案をしているわけではありません。代理店手数料を目当てとして必要以上のものを提案している可能性もありますので、提案を受けた際は良く考えて生命保険の契約をしてもらうのがいいでしょう。
私たちの事務所が考える企業防衛
まずは、企業防衛という考え方について考えていきましょう。みなさんは企業防衛という言葉を聞いてどのような事を思いますか?生命保険でどうやって企業を守るの?と思われる方もおられると思います。私たちの事務所で考えている企業防衛というものは大きく分けると3つあります。
1つ目は、経営者の家族を守るためです。多くの中小企業が銀行などから融資を受けているのではないでしょうか?既に後継者が決まっている場合や、後継者への承継が進んでいるという方もおられると思いますが、多くの経営者の方はまだまだ現役で働こうとおもっている方が多いのではないでしょうか。
しかし、人生いつ何が起きるかわかりません。急に病気になることもあるでしょうし、事故にあう可能性もあるでしょう。そのようないざということが行った場合に、家族を守る必要があります。
中小企業の多くは銀行からの融資を受ける際に連帯保証人に経営者がなっていることがほとんどではないでしょうか。連帯保証人となっていた場合、もし経営者が死亡した時にはその債務が相続人へ引き継がれることとなってしまいます。
つまり、何もしていない家族に急に債務(借入金の返済義務)が発生することとなってしまう可能性があるのです。このような事態にならないために、生命保険というものを使用して家族を守ります。
2つ目は、会社の社員を守るためです。これは1つ目の理由と同じで対象が社員ということです。経営者にいざという時に会社が止まってしまう可能性があります。そのような場合に、会社が回復するまでの時間稼ぎや会社を清算できるような対策をしておく必要があります。
経営者不在でも取引先や社員に迷惑を掛けないように、経営者が復活するまでの時間稼ぎをできるだけの資金を生命保険で用意しておくことが大切となります。経営者のいざというのは死亡だけではありません。病気や入院も同じです。例えば、癌になってしまうと治療から復帰までを考えると長いと1年以上かかることもあるでしょう。それまでの間の時間を稼ぐための資金を用意するのです。この資金を使用して社員を守ります。
3つ目は、事業承継のためです。後継者に事業承継をする際には株式を移す必要があります。親族内承継であれば、企業によっては多額となる場合があります。この資金を生命保険を使用してためておくのです。相続の際の資金にもできますし、自己株式を取得する際の資金にも使えることとなります。事業承継は場合によって多額の資金が必要となります。中々、個人で貯めるというのも難しい場合があります。そのような時に生命保険を使用してためるのです。
このような事態に備えて、生命保険を使用して事業承継を行う準備をします。
ここまでが私たちの事務所が考える企業防衛です。このような観点から私たちは生命保険を提案しています。みなさんも顧問税理士が生命保険の提案を行ってきた場合には、どのような考え方で生命保険を提案してきているのかを聞いてみるのが良いかもしれません。
もし考え方が曖昧な場合や、しっかりとした考えがない場合には、その税理士から提案される生命保険は辞めておいた方がいいでしょう。
どれくらいの生命保険に入るのか
次に、私たちの事務所で実際に提案している生命保険について説明していきます。どのような数字を根拠に補償額を提案しているのかということです。基本的に節税目的のみで提案はしていません。節税目的の保険には出口がないためです。出口を考えないとただただ無駄に保険料を払い、気が付けば無駄に税金を納めていることになってしまいます。
それでは私たちの事務所では何を根拠としているのかを見ていきましょう。
①借入金の返済
まずは、借入金の返済残高分です。いざという時に家族に債務を残さないように、社員に迷惑を掛けないように借入金の全てを返済できる分だけの補償を生命保険で賄うということです。具体的な金額としては、借入残高の1.4倍程度の補償額が望ましいでしょう。
なぜ、1.4倍かというと保険の収入は益金として利益になるためです。その利益から税金分を支払ってもなお借入金の全額を賄うことができる金額が1.4倍~1.5倍ということになります。
保険期間については、保険会社の商品によって様々だと思いますが、5年間の更新タイプでいいでしょう。経営者の方の年齢によっては、10年や長期でもいいと思いますが基本的には5年間で更新をしていくのがいいと思います。
保険は更新のたびに年齢が上がっているので保険料としては高くなっていきます。しかし、借入金は通常通りに進めば、毎年返済していきますので残高は減っていくのが普通でしょう。なので、5年間にしておいて更新の都度、補償額を見直すという形をとることで保険料を安く抑えることができ、かつ補償額をしっかり保つことができるという考え方です。
経営者の年齢が若い間は保険料が抜群に安い時がありますので、そのような場合には長期の保険期間にするのも手だと思います。
その時の年齢や必要補償額、保険料を払うことができる力などを考えて保険を組むのがいいでしょう。
主に、この借入金の返済については死亡保険を使います。死亡しない限りは事業が継続しているので、返済をしていくことができますからね。死亡した時に家族などに迷惑を掛けずに借入金をチャラにするというイメージでしょうか。また、基本的には積立金などない掛捨保険を使用するのがいいでしょう。積立がある保険は基本的に保険料が高くなってしまう傾向がありますので、なるべく安く補償額を賄うために、掛捨保険で十分です。掛捨保険は基本的に全額損金算入されますので、節税にもつながると一石二鳥です。
②役員報酬の1年分
中小企業の決算書のなかで原価以外で一番多く払っているのは役員報酬になっているという会社は多いのではないでしょうか。従業員が複数名いる場合には、給料手当が多くなっているというところもあると思いますが、1人単位で考えると役員報酬だと思います。
この役員報酬を支払っている方たちというのは、会社の中でも重要な意思決定をしていたり、一番の営業頭である方たちであることがほとんどだと思います。このような方たちに、もしものことがあれば、会社の事業が止まってしまったり、売上が落ちてしまうという事態になるということも少なくないと思います。
このような場合に備えて、役員報酬の1年分を賄えるだけの補償額を生命保険で準備するのです。具体的な金額は先ほどと同じで、役員報酬の1年分の1.4倍程度とします。これだけ準備しておけば、役員報酬をもらう人が1年間仕事ができなくても、会社のキャッシュに影響を与えることなく、役員報酬を支払うことで役員の家族を守ることができます。そして、この役員報酬の分のお金で時間稼ぎをすることができるのです。
この役員報酬の中には、役員の家族を守るということと会社を守るということが含まれています。
この場合の保険は、いわゆる三大疾病などの保険を使用するのがいいでしょう。三大疾病になった場合には、回復して復活できたとしても多くの時間がかかってしまいます。その間の資金として準備をするということです。
保険会社によっては障碍者手帳3級以上の場合に支給される保険などもありますので、そのような保険を使うのもいいと思います。
とにかく、役員が仕事に長期間来れない状態の場合の備えという考え方です。
③役員以外の重要人物
もう1つ会社の人材についての考え方です。というのが経営者や役員以外の会社の重要人物についても②と同じように保険で備えておくことが大切です。例えば、経理担当者が1人しかいない場合などで、その人にもしものことがあった場合には、変わりの人材を雇い入れる必要があります。その方が復活するまで待っていても事業に影響がなければ問題はありませんが、仕事が全く進まなくなり売上が上がらないや、経理が進まず成り立たなくなってしまうなどの場合には、どうしようもありません。その際には誰か他の人を雇うもしくは、他の社員の負担を増やして耐えるしかなくなります。
その際に必要となり資金を生命保険で貯めておくのです。その生命保険の対象者は、その大切な人にします。その人が病気になって1年間働けなくなるなどに備えるというための保険です。
どれくらいの補償額あればいいかというのは、人や業務内容によって様々だとおもいますが、その対象となる方の年収の2.5倍~3倍くらいがいいでしょう。例えば400万円の年収の方であれば1,000万円くらいということです。税金を考慮した後の金額でも、同じ程度の金額で雇入れることができるくらいの余裕があることになります。
役員の補償については、行っている会社も多いですが、意外とここは抜けているというところも多いのではないでしょうか。会社のために準備しておきましょう。
④相続対策(死亡退職金など)
最後が相続に備えるということです。相続については十人十色ですので何とも言えませんが、中小企業の相続対策で大切なのが非上場株式の相続になります。非上場株式とは中小企業などの株式市場に上場していない株式のことをいいます。この相続が一番厄介となります。というのも、実際の金銭的な価値としてないのに、相続の際には相続財産として評価されるからです。正確に言うと金銭的な価値はあるのですが、上場会社の株式のように簡単には売れないのです。
この評価額が想像以上に大きく評価されるということがよくあります。しかし、後継者に会社を引き継ぐ場合にはこの株式を相続する必要がありますので、そのための資金を生命保険を使って貯めるということです。
法人で生命保険を掛けても法人に入るから意味がないのでは?と思われるかもしれませんが、死亡退職金ということで引き出すことは可能です。さらに、相続税法上では死亡退職金は500万円×法定相続人数は非課税になります。例えば法定相続人が3名であれば、1,500万円までは非課税ということになります。この枠を利用することで相続税の支払に充てることが可能となるのです。
個人の生命保険についても500万円×法定相続人数が非課税になりますので、死亡退職金と合わせると結構な金額が非課税として相続できることになるのです。
これらの資金を利用して相続税を支払うということを行えばいいと思います。
まとめ
ここまで私たちの事務所が考える生命保険の使い方について説明してきました。生命保険に対しての考え方は人それぞれだと思います。掛捨て保険はもったいないと思う方もいれば、掛捨てしかしないという方もいます。それぞれ保険に対する考え方というのは違いますので、どのような使い方が良いのかというのは皆さんの判断になるのではないでしょうか。あくまで私たちの事務所ではこのような考えのもとで生命保険を提案していますということだと思ってください。
最後になりましたが、私たちトラストソルコンサルティング(東憲吾税理士事務所)は伊賀市を中心に中小企業の経営者の悩みを解決するためのコンサルティングを行っています。「税理士業務ができるコンサルタント」として、税理士業務にとどまらず、資金繰りの支援や経営の支援、自計化支援なども行っています。今回のコラムの内容であるセカンドオピニオンについても受け付けています。顧問税理士を変えたいけれど直ぐには変えられないや、顧問税理士がアドバイスをくれないという悩みを抱えている経営者の方はぜひお問い合わせください。税務業務だけでなく会計コンサルティング・経営コンサルティングと幅広い業務をそろえています。興味のある方はお問い合わせください。