節税について考える|それは本当に必要な節税?それとも無駄な節税?|節税のタイミングと必要性について|伊賀市の税理士が教える|

2025.08.13
節税対策と書かれている

初めに

今回のコラムでは、節税に焦点を当てて考えていこうと思います。みなさんも税金がかかると思えば「節税」をしたくなるのではないでしょうか。しかし、その節税は本当に必要な節税なのか、意味のある節税なのかを考えないままに「節税」という行為を行って税金を安くしようとしている方が多いように思います。

そこで今回のコラムでは、「節税」がもっとも効果を発揮するタイミングはいつなのか、節税は本当に必要なのかについて考えていきたいと思います。

このコラムでの見解は、あくまで私個人の意見であり、私たちの事務所としての考え方でありますので、税理士の先生方によって考え方は異なることを承知の上読んでいただけるといいと思います。

※今回は法人の節税をメインに考えていきます。

節税とは

まずは節税とは何なのかについて考えていこうと思います。みなさん節税とは何と考えますか?税金を安くする・少なくすることですか?納付する税金だけが少なくなれば節税ですか?それとも、無駄な税金を払わないことが節税でしょうか?

このように人によって「節税」に対する定義は異なるのではないでしょうか。その通りで人によって様々だと思います。納付額さえただただ減らせればいいという考えかたの人もいれば、全体のバランスを考えて納付額をある程度減らせればいいという考えの方もいるでしょう。

「節税とは」とインターネットで調べると、「合法的に納める税額を減らす行為」とでてきます。その通りで節税とは、合法的に納付税額を減らす、つまり法律に則って納付税額を減らす行為を節税と言います。それに対して脱税とは逆に違法な行為を行って納付税額を減らすことを言います。

では、例えばどのようなものがあるか考えてみましょう

①節税の例

節税の例をいくつか紹介しましょう。

  • 倒産防止共済などの三共済といわれる国が行っている共済制度
  • 決算賞与の未払金科目への計上
  • 社宅制度などの従業員の福利厚生投資
  • 賃上げ税制などの税額控除制度の適用
  • 減価償却費を利用した節税(少額特例・中古減価償却など)

などなど他にもたくさんでてきますが、このような内容のものが節税といわれる代表だと思います。この節税で大切なことは、決算期を過ぎてしまうと使えないということです。正確にゆうと、事前に対策をしていないと決算月を過ぎたあとではどうしようもできないということになります。

例えば、賃上げ税制を使いたいとなっても、決算月までに適用の条件が整っていればいいですが、適用の条件に合致していなかった場合にはどうしようもできないのです。

決算賞与の未払金への計上についても、決算期末までに通知をしていて、1月以内に支給していることなど要件があります。決算期から2カ月目に入っていれば使うことができないのです。

このように節税は、事前に対策を立てる必要がある制度が多いということです。合法的に納付税額を減らすわけですから、決算期を過ぎてからでは対応ができないのは当たり前のように思うかもしれませんが、意外と知らない方が多く、決算の納付税額を顧問税理士から聞いてから慌てて節税の方法はないのかと相談する方が多いように思います。

そうならないためにも、しっかりと月次で試算表を出せる体制を作り、税額予測が立てられる体制を構築することが大事になってきます。

そのような体制にない場合には、顧問税理士の方に協力してもらって、月次で試算表を出せる体制を早期に実現しましょう。税額予測ができないと節税対策も水の泡になってしまいます。このように節税というわれるものは比較的シビアであり、事前対策が重要になってきます。

②脱税の例

次に脱税の例です。脱税については絶対におこなってはいけないことです。脱税が税務調査でバレた時の罰則はかなり重たいものとなりますので、脱税行為はしないようにしましょう。では、どのようなものが脱税になるのか。いくつか例をあげましょう。

  • 架空売上の計上(過大計上)、売上の過少申告(過少計上)
  • 架空経費の計上(経費の水増し)
  • 架空人件費の計上
  • 二重帳簿の作成

このようなものが脱税といわれるものの代表例になります。

脱税行為の特徴としては、決算月が終わってからでもできることです。

先ほどの節税は、法に則って行われる行為なので、決算月を超えてからできるものは限られていました。それに対して、脱税は決算期を超えてからでもできてしまうものになります。

そりゃそうですよね。ないものを作りだしたり、あるものを隠したりするのですから、決算月前であろうが後であろうが帳簿いじるだけでできてしまうのです。このような行為が違法な行為として脱税といわれるのです。脱税だけは絶対にしないようにしましょう。

このようにみると、脱税と節税は明らかに違うことがわかりますよね。

③節税の注意点

ここまで節税と脱税の違いについて考えてきました。次の章からは節税のタイミングについて考えていきます。その前に節税の注意点としていくつかあげようと思います。

⑴節税には限界がある

まずは、節税の限界についてです。節税といっても効果には限界があります。節税をいくらしても、納付税額が0になるとは限らないからです。なので、納付するのが嫌だ・納付税額を0にしたいということは叶わないと思っておいてください。限界があります。納付するのが嫌というだけで脱税に手を染めては元も子もありません。

⑵節税は課税の繰り延べに過ぎない

そして、節税は課税の繰り延べにすぎません。税額控除など性質が違うものもあるのはありますが、ほとんどの節税が課税の繰り延べにすぎません。課税の繰り延べとは、払わなければならない税金の支払いを先延ばしにしているイメージです。

例えば、節税のところで紹介している倒産防止共済についても、月額20万円年間240万円まで経費として節税をすることができます。しかし、この倒産防止共済を解約する際には利益として計上することになります。そのため、解約をする年は納付税額が多くなってしまいます。今の税金の支払いを少なくし、将来の税金の支払いを多くしているので、課税の繰り延べなのです。よって、解約するタイミングなどの出口も考えながら節税をしないと、とんでもないことになる可能性もあるので気を付けてください。

⑶節税はお金を失う

この部分については、次の章で詳しく説明を行いますが、節税は基本的にはキャッシュアウトを伴います。つまり、納付税額を減らすためにお金を使わないといけないのです。なんだか矛盾している感じがしますよね。この違和感に気づいて覚えておいてもらう必要があります。納付税額を減らすためにキャッシュを使って、キャッシュがなくなってしまったら経営が成り立たなくなってしまいます。税金を減らしたいためだけに、その節税が本当に必要なのかどうなのかを考えて行動してもらう必要がでてくるでしょう。

では、節税はどのようなタイミングで行うのが最もいいのかについて、次の章で考えていきたいと思います。

節税のタイミング

それでは、節税のタイミングについて考えていきましょう。節税のタイミングとは何か。完全に私たちの事務所の概念ですが、税率が変わるラインを跨ぐことが節税になると考えています。

その説明の前に、節税には2つの節税があることから説明しましょう。

節税には、「キャッシュフローが伴う節税」「キャッシュフローが伴わない節税」の2種類があります。が、節税のほとんどが前者の「キャッシュフローが伴う節税」になります。つまり、節税(納付税額を減らす)するためには、キャッシュがでていくことになるのです。そのため無理な節税はキャッシュフローを悪化させるだけになってしまいますので、慎重に考える必要があります。このキャッシュが出ていくというのがポイントになるのです。ここを理解していない方が、かなり多くおられる印象です。

そこでポイントとなるのが、税率が変わるラインになります。

法人税で考えると、税率(税額)が大きく変わるラインは、所得が800万円の部分になります。中小企業では、所得が800万円までは軽減税率として15%がかかりますが、800万円を超える部分については23.2%の税率がかかることになるのです。つまり、この800万円のラインが税額のおおきく変わるラインとなるので、このラインを跨ぐように節税を考えていくのが、最も効果が高いと思います。

例えば、所得が1,000万円と800万円で考えると、800万円の場合は法人税が120万円になるのですが、1,000万円の場合だと法人税は166.4万円になります。200万円の所得が変わるだけで法人税が46.4万円かわることになります。これの他に法人住民税や法人事業税も加わるため、非常に税負担として大きな分かれ目となることが分かってもらえると思います。200万円の所得(利益)が変わるだけなのに税負担としては、急激に大きくなってしまうのです。

また、決算での税額が大きくなるということは、翌期の中間納付の金額も大きくなるというところに注意が必要となってきます。

なので、この800万円ライン近郊にある場合には、800万円を跨ぐように節税を考えていくのが最も効率的で効果が大きいのではないでしょうか。

しかし、そのためには期中の間に決算額がどの程度になるのかを把握しておく必要があります。このコラムでも何度も言っていますが、月次試算表での把握が欠かせませんので、月次試算表をいかに早く作成できるかが大切だと思います。

節税対策のポイントは、月次試算表の作成体制と税額予測の体制ができているかどうかだと思います。この2つができていなければ、全く節税対策の意味をなさず有効な節税を行うことはできないでしょう。

法人税は、税率のラインが15%と23.2%の2つしかないため、影響力も少ないかもしれませんが、所得税だと税率が変わるラインも多く、最高では45%にもなるため税率のラインの意識は法人税と比べるとシビアになってくるのではないでしょうか。1つ段階が上がったり下がったりするだけでも税額としては大きく変化しますので、非常に大事になってくると思います。

これで、節税のタイミングについては理解していただけたと思いますが、節税を行っていくうえで最も大切なのはキャッシュフローになります。キャッシュフローを無視した無理した節税が企業にダメージを与えることが良くありますので、節税の際にはキャッシュフローも含めて考えていく必要があると思います。

例えば、800万円の所得(手持ち現金とイコールとします)があるとします。法人税率は15%なので120万円になります。つまり、キャッシュフローで考えると120万円の税金を支払っても680万円は手元に残ることになりますよね?この考え方が非常に重要になってきます。

この時に、120万円の税金を支払うのが嫌だからと言って、500万円の節税をおこなったとします。すると、所得は800万円から300万円に下がり、納税額も45万円に減ります。

しかし、手元現金も680万円から255万円まで減ってしまうことになるのです。このように節税をせずに納付した場合には、680万円の現金が残るのに対して、75万円の納付額を減らすために節税を行った場合には、手元に残る現金は255万円と425万円も減ってしまうことになります。キャッシュフローに余裕がある場合には問題はないですが、決算月の翌月に300万円の支払いがあるなどの状況であれば、キャッシュフローが一気に悪くなってしまうことにもなるのです。

このように節税にはキャッシュアウトが付き物ですので、納付税額を減らすことばかり考えるのではなく、キャッシュフローとのバランスを大事に考えてもらうのが一番だと思います。

キャッシュアウトが伴う節税の優先順位というものを考えてもらうといいと思います。

節税の優先順位としては、

  1. 三共済などの国の共済制度
  2. 将来への投資(決算賞与などの従業員への投資や福利厚生・翌年に買う予定の設備の前倒し)
  3. 企業防衛(損金経理される生命保険など)
  4. 費用の前倒し(地代家賃などの1年前払い)
  5. 節税商品への投資(船・航空機など)

このような感じに考えてもらうのがいいでしょう。どれもキャッシュアウトが伴いますが、同じキャッシュを使って節税を行うのであれば、この優先順位で行ってもらうのが、企業の成長・防衛のために重要となってくると思います。

まとめ

このように、節税と言っても幅広く、節税を行うためには時間を要することがわかると思います。そして、基本的にキャッシュアウトが伴いますので納付税額だけを減らすという考え方は危険です。キャッシュフローとのバランスを考えながら節税を行ってもらうのがよいでしょう。

無駄な税金を支払う必要はありませんが、税金を払う方が会社にとって安全ということもありますので、顧問税理士の方と相談しながら行ってもらうのがいいと思います。優先順位に迷ったときは第3章の優先順位を目安にしてもらえれば良いと思います。

節税を企業成長のために使っていきましょう。

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